車いすユーザーの困りごと 女性モデルの発信に共感広がる 身障者用駐車場のマナーなど

2019.07.25
ニュース丹波市丹波篠山市地域

SNSで日常の困りごとなどを発信し、大きな反響を呼んだ日置さん

脊髄の病により、手足が不自由になりながら、「車いすのファッションモデル」として全国を舞台に活躍している兵庫県在住の日置有紀さん(29)。モデルの活動以外にも、障がい者の立場から、日常生活の中での困りごとや便利グッズについて、ツイッターなどのSNSで発信している。このほど、身障者用の駐車場の斜線部分などに停車する人がいて困っているという実体験をツイッターに投稿したところ、2万9000件以上リツイートされるなど大きな反響を呼んだ。駐車場以外での困りごとや発信を続ける理由など、さまざまな思いをインタビューした。

身障者用駐車場の構造理解を

 

身障者用スペースの斜線部に駐車されたケース。右の車が日置さんの車(日置さん提供)

 ―今回の駐車マナーの件について

車いすの出し入れなどがある身障者用の駐車スペースは広くとってあって、扉を開けるために斜線部がありますが、そこに車を停める人がいます。こうなると車に乗れず、戻ってくるのを待つしかない。お店の人に持ち主を呼んでもらっても、何十分も待つことがあります。

月に数回はありますが、謝られたのは今まで一度だけ。にらまれたり、逆に怒られたりすることもありますね。

 ―ツイートは多くの反響を呼んだ

日ごろから困ったことなどを書き込んでいますが、今回はたくさんの車いすユーザーから「わかる」「自分もあった」など、たくさんの共感をいただき、自分でもびっくりしました。

車いすユーザーだけでなく、妊婦さんや杖を使う人も利用するスペース。反響があったことで、少しでも状況が改善すればと思います。

 

セルフ式スタンドの使いづらさ

 

多目的トイレの扉を開けるとベッドが出されたままに(日置さん提供)

 ―ほかに困っていることは

例えば、お店などにある多目的トイレ。入ってすぐの壁に介助用や子ども用の折り畳みベッドが取り付けられていますが、使った後、元に戻っていないことがあります。

車いすの人には持ち上げるのが大変で、中に入ることができず、ほかのトイレを探すしかありません。

また、セルフ式のガソリンスタンドでは、車いすからタッチパネルになかなか手が届かなくて困ります。店員さんに「満タンボタンを押してほしい」「給油口を開けてほしい」などと頼んだら、「セルフなので」と断られたり、呼び出しのインターホンを使うと、「緊急用なので使わないで」と言われたこともあります。

結局、何とか届く「3000円」を押すことが多いですね。もちろん対応してくれるお店もありますが。私の暮らす地域はほとんどセルフ式に変わったので困っています。

電車に乗るときも大変。事前に電話をして駅員さんに介助してもらうのですが、予約をし、発車15分前に駅に着いた際、「降車駅にも連絡が必要なので、次の電車にしてください」と言われました。

エレベーターの鏡は、もともと、車いすで前向きに乗り込んだ際、降りるときに後方を確認するためのものですが、鏡の前に立たれると見えないこともあります。

 

さり気ない優しさがうれしい

 

 ―なぜSNSで発信するように

18歳で病気になり、車いすを使うようになって、日々の生活の中でわからないことや不便なことがたくさんある中、ほかの車いすユーザーの方が投稿されていたことで、とても役に立ったことがあったんです。なので、自分も便利なことや困ったことがあれば発信するようになりました。逆に言えば、それくらい情報が少ないってことです。

100円均一ショップで見つけたプッシュ式のピルケースは、私のように手の不自由な人でも使いやすく、たくさんの人に「役立った」と言ってもらえました。

 ―ネット上に発信することで困ることもあるのでは

共感してもらえることもあれば、中傷もあります。モデルをしていることもあって、「売名行為」と言われることもあります。

いわれのない中傷はやめていただきたいし、私は思ったことを書き込んでいるだけで、そもそも反響があるとも思っていませんでした。

ただ、反論でも、ちゃんとした意見を書いてくださる人もいます。そういう方にはこちらもきちんと返信させてもらいますので、どんどん書いてほしいと思います。

 ―発信することで、どうなればいいと考える

障がい者がどんなことに困っているのかなど、現状を知ってほしい。そして、少しでも障がいのある人が過ごしやすくなればと思います。

駐車場のケースなどでは、「見かけたら注意したい」と言ってくださる人もいます。けれど、注意してもらったことでけんかになったら大変。一方で、「荷物を積もうか」「車を前に出しましょうか」と言ってくださる人もいて、そういうさり気ない優しさの方がうれしかったです。そんな思いを知ってほしい。

 ―障がいをテーマにした映画製作団体「バリアフリー・フィルム・パートナーズ」の共同代表も務めている

映画に出演したり、脚本がよりリアルになるようにするお手伝いなどをしています。また、著名な人に協力をお願いするために、あいさつにも出向いています。

今後、公開予定の映画を通じて、障がいのある人もない人も互いを知り、尊重し、理解しあう「心のバリアフリー」を目指したいです。

SNSでは現実に起きている問題を発信し、映画では心に訴えかけるような活動ができればと思っています。

ひおき・ゆき 脊髄の病により、四肢体幹機能障害となり、車いすでの生活を送る。ブログで日常や便利な福祉用具などを紹介し始めた時、「障がい者のファッションモデルを探している」という話が舞い込み、以来、「車いすモデル」としてファッションショーをはじめ、テレビなどのメディアでも活躍している。

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