地方への移住、若手担当で倍増 田舎のマイナス面も「あえて伝える」

2019.08.08
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「たんば“移充”テラス」の相談員たち=2019年7月18日午後4時15分、兵庫県丹波市春日町で

ふるさとに戻って暮らしたい、田舎で子育てがしたい、地方でビジネスを始めたい―。さまざまな夢や思いを抱いて、都市部から地方へ移住する人がいる。兵庫県丹波市では移住を考えている人たちの相談窓口として、2018年度「たんば“移充”テラス」が開設され、移住者数が大幅に増加。その秘密は何なのか。取り組みを取材した。

 

「住み継がれるまち」の実現めざし

「“移充”テラス」の窓口で話を聞く相談員

「たんば“移充”テラス」の運営は、市から委託を受けた一般社団法人「Be」(中川フェテレウォルク代表理事)が担っている。これまでは行政と民間がそれぞれ移住定住促進事業を行っていたが、昨年度、「テラス」に一元化された。

「Be」は、「住み継がれるまち」の実現をめざし、元地域おこし協力隊で、同市出身の中川さん(38)を中心に設立。現在、30歳代を中心としたU・Iターンの6人で相談業務を行っている。相談員が若手とあって、同年代の移住希望者からの相談増につながっているという。

 

30―40歳代の相談増加

丹波市への移住者数の推移

18年度、「テラス」を利用して同市へ移住した人は29組52人。内訳をみると、20―50歳代が20世帯35人、60歳代以上が11世帯17人となっており、現役世代が比較的多くを占めている。移住前の住所は、大阪府が8件と最も多く、次いで宝塚市、川西市、京都府、東京都が3件などとなっていた。

17年度の移住者数14組29人と比べると、大幅に増えており、テラスの効果が一定数表れた形といえそうだ。

また、相談件数をみると、30歳代の相談者が最も多く、86件あった。次いで40歳代77件、50歳代62件、60歳代49件、20歳代33件となっている。

以前は移住相談者は50、60歳代が多かったが、30歳代の若手移住者が相談員になったことで、同世代からの相談が増加。発信の仕方や体験の伝え方を変えたことで共感を呼んでいるようだ。

 

移住前には”しきたり”も伝え

移住者と移住希望者を対象にしたワークショップは、野草を摘んで天ぷらにしたり、黒豆みそを手作りしたりと、田舎ならではの体験を企画している

相談者が移住する前には、転入先の自治会長との面談を実施しているのも特徴。自治会のしきたりなどをあらかじめ伝えておくことで、スムーズな定住につなげている。

移住相談の仕事は、相談員の人柄やネットワークに負うところも大きい。相談員らは、常に相手の立場に立って考え、あえてマイナス面の情報も包み隠さず提供する。

移住者にとっていい選択ができるよう、価値観などを“根掘り葉掘り”聞き出すことも。さらに、それぞれが培ってきた人脈をいかし、丹波市に住むいろいろな人を紹介することもある。

「テラスが貢献できているのは、田舎暮らしならではの価値を求めている人に対して、情報提供の“質”の部分なのかなと考えています」と中川さん。

丹波市の「空き家バンク」を利用した第1号の移住者で、現在はテラスの相談員として働く戸田晴菜さん(32)は、夫と2歳の娘とともに、田舎の自然や食にどっぷりふれる子育てを実践している。「横のネットワークがしっかりあるのが丹波市のいいところ。チャレンジしたいことに協力してくれる”おせっかい”な人が多い気がします」と笑う。

法人名の「Be」は、「在る」の意味。中川さんは「それぞれが思いをもって移住してきたメンバーばかり。相談を受ける自分たちも、ここでの理想の暮らしを嘘偽りなく実践していたい」とさわやかに語った。

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