「森の庁舎」に問題浮上 管理か景観か…伐採計画に議会が異議 「切り過ぎでは」

2019.09.25
ニュース丹波市地域

木が茂り、目論見通り森のようになったものの、管理上の問題が浮上している丹波市春日庁舎=兵庫県丹波市春日町黒井で

兵庫県丹波市の市役所春日庁舎(同市春日町黒井)に植栽されている太い中高木の約半分を伐採するとする市の計画に議会から「待った」がかかっている。オーストリアの「ウィーンの森」をイメージし、庁舎を取り囲むように植えた木が目論見どおり育ち、森になったものの、落葉や見通しが悪くなるなど、育ち過ぎた木は庁舎管理上の問題に。しかし、およそ半数を伐採する計画に、議会は、「せっかく育った木を切り過ぎでは」と反応。市は対応に苦慮している。

伐採予定木にはピンクのテープが巻かれている

市は予定していた伐採する木を127本から減らす方向で選木をやり直しているが、残す木と切る木の具体的な基準がなく、頭を悩ませている。

同庁舎は、1995年に整備された。自然と人と文化が調和した地域づくりを掲げて同県が策定した88年の「丹波の森宣言」を背景に、今も続く文化交流「ウィーンの森親善訪問」でウィーン市を訪れた当時の町の関係者が森に感銘を受け、庁舎を取り囲むよう植栽。「庁舎修景整備工事」として約360本の中低木を新植した。およそ四半世紀を経て一部は枯れたが、多くが成木となった。

ところが、市によると、繁茂により▽庁舎西側の市道から庁舎が見えづらく、来庁者が迷う▽落ち葉が水路を埋め、駐車場が水浸しになる▽電線や窓にかかる▽公用車が汚れる―など庁舎管理上の問題が浮上。細い木を除き約250本ある中高木を約半分に間引くことにし、約400万円を予算化した。

▽間引いて見通しを良くする▽成長を続け構造物をいためかねない大木は切る▽実が滑って危ないヤマモモは切る▽強風で倒れた場合に車をいためかねない木は切る▽サクラは残す―などと思案しながら選木し、今月から来年2月まで工事を行う予定だった。

庁舎は、近くの山城「黒井城跡」から一望することができる。戦国時代には、同城主だった赤井(荻野)悪右衛門直正と明智光秀が激しい合戦を繰り広げた歴史がある。今月の一般質問で、ある市議会議員が、明智光秀を主人公とする来年放映のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」に触れつつ、「黒井城跡から見て、森のように見える庁舎があっていいんじゃないか」と提起するなど、議会から伐採計画に「待った」がかかった。

市が計画を説明した市議会の委員会でも、「市の説明と現況が食い違っている」「伐採する本数の多さが目につく」などの指摘が相次ぎ、市で練り直すことになった。

ただ、議会から許容範囲の伐採本数など具体的な提案はなく、市は考えあぐねている。

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