暴力性

2019.11.03
丹波春秋未―コラム

 暴力性をむき出しにした非道な事象が相次いで報道されている近頃である。寒々とした気にさせられるが、はたして自分は暴力性と無縁でいるかと問うてみる。

 アイヒマン実験と言われる心理学の実験の話を聞いた。教師役と生徒役、そして実験の責任者役とに分かれ、教師役が実験の被験者となる。生徒役と責任者役は、実験の協力者。実験では、教師役となる被験者が出した問題に対し、生徒役が間違った解答をすると、被験者は生徒役に電気ショックを与えるよう指示された。被験者は、生徒役が協力者であることは知らされていない。

 間違った解答をし、実際には与えられていない電気ショックに苦悶する演技をする生徒役。教師役の被験者は「実験をやめさせてほしい」と訴える。しかし、実験の責任者役から「だめです。続けてください」と指示されると、最大電圧まで電気ショックを与え続ける被験者が続出したという。

 被験者は一般常識のある普通の人。脅迫されたわけでもないのに「あなたに責任はない」と告げられると、電気ショックを与える行為をやめなかった。その割合は65%だったという。

 人の心には暴力性が潜んでいることを認識せざるを得ない。肝心なのは、暴力性をそぎ落とし、暴力性の発動を抑制できるかどうか。省みる必要がある。(Y)

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