進む「特別警戒区域」指定 土砂災害可能性も「引っ越すわけには…」 住民集い危険認識

2019.11.02
ニュース丹波市地域

説明会で示された2500分の1の区域指定案の地図(一部加工)。自宅が特別警戒区域に含まれているかどうか判別できる

台風による風水害で全国的に甚大な被害が相次ぐなか、兵庫県がこのほど、同県丹波市青垣地域4会場で「土砂災害特別警戒区域」の指定説明会を開いた。県の調査の結果、青垣地域の特定区域案は194(急傾斜地と土石流)。参加者たちは、自宅が特定区域に含まれているかどうかを地図で調べ、避難方法や避難先、県市の支援などを問い合わせた。「危ないということは分かった」「引っ越す訳にもいかない。避難する以外の方法はないと分かった」と現実を踏まえた。

 

家移転に補助も「現実的でない」

県が事前に配った1万2000分の1の区域指定案の地図。この地図では自宅を判別するのは困難。山合いの狭い谷は、特別警戒と警戒区域でない場所がほぼない

県は特別区域を線引きした1万2000分の1の地図を事前に住民に配布。地図を見て同区域の範囲に含まれそうと目星を付けた人ら140人が参加した。個別相談の形で、県職員と市職員が2500分の1の詳細な地図を広げ、一人ひとりに危険性などを説明した。

日当たりが良い平地は田畑にし、薪を取りに行くのに便利で風除けにも良い山際に、先祖代々暮らしてきた人が多い地域。丹波新聞社が県の地図で青垣地域を調べたところ、民家と見られる建物を中心に60棟以上を特定区域内で確認した。寺も複数あった。

自宅が特別区域に含まれている男性(77)は、「山から一番遠い、2階の部屋で寝なさいよと教えてもらった。家を移転するなら補助がある、と教わったが現実的でなく、実際はどうしようもない。あちこちでひどい被害が出ているので、危険を認識するだけでも意味があったのかな」と話した。

特別区域に含まれる寺の総代男性(67)は、「寺に常に人がいると言うと、早く避難するよう周知して下さい、という話だった。裏山が崩れて建物が傷んだら経済面で助けてもらえるのかと聞いたが、それはないということだった。『危ない』と言ってもらっただけだったが、仕方ない」と口を結んだ。

特別地域指定は、すでに指定を終えている、生命に「危害」が生じるおそれがある「土砂災害警戒区域」とは別に、土砂災害時に土石で建物が壊れるなど特に危険性が高く生命に「著しい危害」を及ぼしかねない場所を指定し、開発や建築物の構造に規制をかけるもの。急傾斜地崩壊対策などハード面で危険個所全てをカバーしきれないことから、危険性を周知することで自ら命を守ってもらおうというソフト面での対策。

同県丹波市は、該当地域からの住宅移転に1戸あたり最大415万円、撤去に80万2000円を補助する。2016年度に補助金を新設したが、これまで利用はない。

また、「特別」ほどではないものの危険な場所を示す「土砂災害警戒区域」は、市内全体で1467カ所(急傾斜837、土石流627、地滑り3)を指定済み。

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