ネズミの絵巻がシュールなスタンプに 上司と部下の関係描く 江戸時代の文化財題材

2019.12.21
ニュース丹波篠山市地域地域

鼠草紙のスタンプ

来年の「子(ね)年」を前に、兵庫県丹波篠山市内の歴史施設などを管理する一般社団法人「ウイズささやま」が、市指定文化財の絵巻物「鼠(ねずみ)草紙絵巻」に登場するネズミたちを活用した「LINEスタンプ」を作成、販売を始めた。主人公の「権頭(ごんのかみ)」と家来の「左近尉(さこんのじょう)」の関係を、現代社会でも通用する「上司と部下」に見立てて台詞を構成。愛らしく、どこかシュールな雰囲気が漂うスタンプに仕上げた。鼠草紙のPRに取り組んでいる同法人は、「新年のあいさつもあるので、ぜひ、年始のスタンプにも使ってほしい」と呼びかけている。

 

「一杯つきあえよ」

室町時代に成立したとされる鼠草紙絵巻は、ネズミを擬人化させた物語で、権頭が観音のお告げで姫君と結婚したものの、正体を見破られ、悲しみの果てに高野山へ出家するという内容。正体がばれた後、姫君は別の男性と結婚した上、ネズミを寄せ付けないようにと猫を飼い始めるという何とも悲哀に満ちた物語だ。

同市に伝わる絵巻は全長13メートルの大作。江戸時代の写本で、篠山藩主・青山忠高の妻が嫁入り道具として持参したとされ、現在は同法人が管理する青山歴史村で所蔵されている。

「お供します」

今回のスタンプは第2弾。第1弾のスタンプでは、「べっちょないで(かまわない)」や「おってけぇ?(おられますか)」など丹波篠山弁を前面に押し出したものだったが、同法人は、「丹波篠山の人ならばスタンプだけで会話になるほどだったけれど、外部の人には意味がわからないものばかりでした」とぽつり。

そこで第2弾では、関西弁にしただけでなく、権頭と優秀な家来の左近尉の関係にスポットを当てた。権頭のスタンプは、「知らんけど」「一杯つきあえよ」「君に任せたよ」などと、”上から目線”。一方の左近尉には、「お供します!」「行ってらっしゃいませ」「また二日酔いですか?」など、部下らしい言葉を採用した。

言葉にならへんわ

実際、作中で左近尉は”できる”家来。権頭と姫君が出会うシーンでは左近尉が初対面の姫側と接触して縁談を取りまとめる。話がまとまると権頭がさっさと帰ってしまう一方、次の場面では早速、輿入れの準備を整えるなど、大車輪の活躍を見せる。また終盤、姫が琴の糸を使って仕掛けた罠にかかってしまう権頭を救うのも左近尉だ。

同法人は、「パワハラが横行している昨今。権頭と左近尉の関係も、一見するとパワハラと感じなくもない。けれど、現代のそれと全く違うのは、左近尉が権頭を心から慕っている点。きっと権頭のことを『かわいい』と思っているんでしょうね」と神妙に語る。

また二日酔いですか?

台詞は法人内の会議で厳選。部下は、「上司に言われて嫌なこと」を、上司は、「部下に言われてうれしかったこと」を列挙し、40パターンに収めた。ネズミの口を借りた法人内の会話でもあり、また、誰でも使える内容にした。

市教育委員会の許可を得て、絵巻の写真画像からネズミたちを切り抜いて台詞をつけている。

LINEの「スタンプショップ」から「鼠草紙」で検索を。40個セットで120円。

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