境内染める「原始」のイチョウ 一風変わった葉見つけられる? 全国的にまれな名木

2019.12.03
ニュース丹波篠山市地域地域

境内を鮮やかに染めるイチョウの葉。ラッパ葉、わかりますか?=兵庫県丹波篠山市北で

兵庫県丹波篠山市北の医王寺にあるイチョウが落葉のピークを迎え、境内を鮮やかな黄色に染めている。このイチョウには一風変わった特徴がある。落ち葉をよく見ると―。

樹高約25メートル、幹周り約2・3メートル、樹齢は不明。一見、何の変哲もないイチョウだが、この木には、「ラッパイチョウ」という名がある。通常の扇形の葉に交じって、名の通り、ラッパに似た漏斗(ろうと)状の葉をつけるからだ。

同市教育委員会によると、イチョウの変異種で全国的にもまれな現象。普通の葉に混じってラッパ葉が全体の1割ほどみられる。

イチョウ自体、「生きた化石」とも呼ばれるほど原始的な樹木だが、このラッパ葉はイチョウの中でも「原始葉」と考えられている。茎が葉に変化する途中の姿が漏斗状の形として現れており、茎の性質を残した植物の進化の過程を示すものという。

葉の1割ほどにみられるラッパ葉

ラッパ葉のほかにも奇形葉の種類を多く持つことから、植物学的に大変貴重であるとして、1977年に県の天然記念物に指定されている。

この木は地域の昔話にも登場する。

ある日、泣き止まない赤子を連れた母親が寺で休んでいたが、お金もなく、乳も出ない。悩んだ挙句、赤子をイチョウの根元に置いて立ち去った。

しかし、いたたまれなくなり、数日後、見に行ってみると、赤子は何もなかったように元気に笑っていた。母親は、「きっとイチョウが守ってくれたに違いない」と感じ、木に礼を言ったところ、「この木のギンナンを食べるとお乳が出ますよ」と声がし、実際に持ち帰って食べてみると、たくさんの乳が出るようになった―。

昔から地域の名木として知られていたことが伝わるエピソードだ。

今もラッパのような葉を見に、市内外から寺を訪れる人がいる。家族で訪れていた3歳の男の子は、漏斗状の葉を見つけるたび、「あったよー!」と元気な声を上げていた。

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