大阪の公立助産所を視察 「とてもうらやましい」 分娩休止に揺れるまちの市民ら

2019.12.26
ニュース丹波篠山市地域地域産科問題

高石市立母子健康センターで助産師(右)から説明を受ける検討委員ら=2019年12月12日午後2時44分、大阪府高石市で

中核病院が分娩休止を決定している兵庫県丹波篠山市の市民らでつくる「産科充実に向けての検討会」のメンバーがこのほど、大阪府高石市の市立母子健康センターを視察した。同センターは全国的にも数少ない公立助産施設。

同センターは昭和38年(1963)に町立(当時)の助産所としてスタートし、現在は市や市医師会などが出資する一般財団法人「高石市保健医療センター」が運営。数年前に産科のクリニックが閉鎖し、同市内唯一の分娩施設となっている。

常勤助産師4人、非常勤8人、非常勤の産科医2人、アロマ非常勤講師1人という体制。併設する高石市立診療センターも運営している法人の職員が、事務を兼務している。

2018年度の助産業務は114件。うち46件が市内で、68件は堺や泉大津などの近隣市から。夫や家族の立ち会い分娩も認めているほか、分娩件数が医療機関ほど多くないため、診察に1時間をかけるなど、助産師が妊婦の性格や食生活まで深くかかわっている。

自然分娩のみを扱うため、入院が必要な場合や異常時は、協力医療機関や、高度周産期医療に対応できる病院が加盟し、24時間体制で重篤な母体・胎児の緊急搬送を受け入れる大阪府のネットワーク「産婦人科診療相互援助システム」や「新生児診療相互援助システム」と連携して対応。緊急を要する場合は、近隣の病院や大阪母子医療センターに搬送する。

母子健康センターで出産する予定の妊婦は、事前に近隣市の病院を受診。新生児は高石市立診療センターの小児科医師が健診し、異常が見つかった場合は近隣の医療機関に連絡する。

妊娠中や分娩時の救急搬送は直近1年間で1件のみだった。

同市の出生数は年間約450人で、市内の利用は1割。母子健康センターを選んだ理由は、ほとんどが口コミによるもので、同法人によると、▽自分らしいお産がしたい▽距離的に近い▽土、日曜、祝日も診察している―などがあるといい、「昭和38年からあるので、祖父母世代からの口コミもある」という。

視察した委員からは、「どこを見ても母親のことを考えていて、とてもうらやましい。自分がもう一度出産するなら、ここでしたい」などの声や、「医療機関との連携があるからこそ。丹波篠山でもこのような施設ができればいいが、連携体制が作れるのか」という意見も出ていた。

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