苦しさ優しさ分け合う「家族会」  愚痴の言い合いも大切なこと【認知症とおつきあい】(3)

2020.02.29
ニュース丹波市丹波篠山市地域地域

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認知症の人を介護する家族と出会うと、「こんな夫を介護しているのは私だけだ」「親と同年代の高齢の人を見ても、みんなしっかりと働いている」と訴える人がいる。確かに誰でも苦しい時は自分だけが…と思ってしまう。

しかし、介護の必要な人に関わる専門職からみれば、同じような症状や同じような環境、似たような家族関係の中で介護されていて、似ているな~と思ってしまうことがある。

もちろん、介護を受ける人とする人の関係性に、全く同じということはないし、みんな同じという見方は良くないこともわかっている。だが、「ああ…あの介護者さんとこの介護者さんは同じような悩みで孤独に陥っている」と思うことがよくある。

同じように母親を介護している娘さん同士共通の部分で話ができれば、お互いに苦しさや優しさを分け合うことができるかもしれない、と思う時、やっぱり家族同士が集う場の大切さを感じてしまう。

男性からみれば、家庭内のことを他人にしゃべって、愚痴の言い合い、聞き合いでくだらないことと、言う人もある。でもとんでもない、その愚痴の言い合いから、同じ介護の苦しみや辛さ、あるいはあきらめや、ちょっと笑える出来事などに共感し合えることがある。それを糧に明日の介護につなげる強さを女性は持っている。

…などと言うと語弊がある。昨今、妻や母を介護する男性も多い。そして男性の中にも、介護の知恵や情報をしっかり共有して、介護者同士お互いの感情をわかち合い、励まし合う方々もいる。

親の介護をする立場になって改めて「介護」という絆の仲間と出会い、支えたり支えられたりしながら生きていくことの大切さを知らされたと語る多くの介護者さんから私は学んできた。「しんどいな~」と思う時も家族会の集まりはいつも温かい雰囲気で癒してもらえる。「ありがとう~家族」である。

寺本秀代(てらもと・ひでよ) 精神保健福祉士、兵庫県丹波篠山市もの忘れ相談センター嘱託職員。丹波認知症疾患医療センターに約20年間勤務。同センターでは2000人以上から相談を受けてきた。

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