市立助産所の設置検討 市長「広域体制なければ断念」 委員「My助産師の普及を」

2020.02.22
ニュース丹波篠山市地域地域特集産科問題

さまざまな提案が出された検討会=2020年2月15日午後7時4分、兵庫県丹波篠山市網掛で

中核病院の分娩休止を受け、市民も交えて将来の分娩体制を議論している兵庫県丹波篠山市はこのほど、7回目となる「産科充実に向けての検討会」(委員長=酒井隆明市長)を開いた。助産師主導で正常分娩のみを取り扱う市立バースセンター(助産所)の開設に向けて、協力を求めた兵庫医科大学から「周産期医療が整備された病院も含めた、より広域での体制の構築」を指摘されている点について、酒井市長は席上、体制整備ができなければ、バースセンターの開設を断念する考えを示した。酒井市長は、「とにかく緊急時の広域の体制整備が一番の課題」とし、県知事や、済生会兵庫県病院(神戸市北区)や三田市民病院を持つ同県三田市のほか、神戸大学医学部に働きかけている現状を明らかにした。

検討会で市は、医大、県との協議で医大に協力を呼び掛けたものの、医大は現体制では応じられず、周産期医療が整備された病院も含めて、「より広域での体制を構築するべき」と応じたことなどを報告した。

医師の委員は、「安全を担保したバースセンターができるならば賛成だが、無理をして作ったとして、何か起きてからでは遅い」などと指摘。酒井市長は、「安全が担保できていないのに開設することはない」と応じた。

一方、市や助産師らでつくる専門部会の委員は、「『何が何でも産む施設を作る』のではなく、丹波篠山市の女性のことを真剣に考えていることを分かってほしい」と前置きし、「医師不足によって分娩機能の集約化が進んでいるが、集約した先の病院に正常なお産ができる妊婦を送ることでキャパオーバーになれば、妊婦に寄り添った支援は難しくなるし、病院の機能を麻痺させる可能性もある」とした。

また、「妊産婦の死因1位は、かつては分娩時の出血だったが、今は自殺。無事に産めても、育児ができるような状態ではないのに病院から地域に帰しているのが現状」とし、「まずは妊産婦に継続して寄り添う『My助産師制度』を広げ、実績を積んでいくことも重要なのでは」と報告した。

母親の委員からも、同制度の普及については賛同の声が相次ぎ、医師の委員も、「子どもへの虐待や妊婦の自殺を防ぐ意味でも、My助産師はすごくいいこと」とした。

市は昨年10月から同制度の簡易版として、ハイリスクの妊婦に対して産前2回産後1回の助産師派遣制度を開始しており、委員からは、「初産婦全員を対象にした制度にできないか」などの声が出された。

バースセンターについては、広域での体制整備の構築が確認できないと議論ができないため、市と専門部会で検討を進めていく。

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