農事始め行事「おこと」40年ぶり再現 無事祈願し地神に「ぼたもち」 子や孫たちも協力

2020.03.20
ニュース丹波市地域地域

ぼたもちと、ネコヤナギのはしをわらでくくったお飾りを供え、地神さんに一年の農業の無事を祈る永井直樹さんと舞子さん=2020年3月16日午後1時23分、兵庫県丹波市市島町上垣で

兵庫県丹波市市島町の農業、永井直樹さん(67)がこのほど、自宅で農事始めの季節行事「おこと」を営んだ。ヨモギの新芽を混ぜたぼたもちとネコヤナギでつくったはしを地神さんに供え、無事を祈願した。

市島町史実研究会の会員で、今春発刊の機関紙で「こと」について執筆したのを機に、約40年ぶりに再現することに。

永井さんによると、日は3月16日と決まっていて、前日にヨモギの新芽を摘み、はし用のネコヤナギを取って来るのが子どもの役割。ぼたもちを食べるのに使ったはしをわらでくくって飾りにし、ぼたもちとともに地神さんに供える。

息子の靖幸さん(33)と妻の舞子さん(33)、暖人君(6)、悠太君(4)、大輝君(2)の3人の孫に協力してもらい、昭和30年代に自身が経験した記憶を頼りに、昔どおりのやり方で再現した。

昔は、農家はどこでも「こと」をしていて、近所の子が集まってネコヤナギを取りに行ったという。「新型コロナウイルスの流行で世の中が荒れているが、昔の人がしていたように祈ることで、平穏な農の暮らしができれば」と直樹さん。

「こと」行事を初めて知った舞子さんは、「今の時期にヨモギを探すのは大変。子どもが摘んでくれて、何とか量を集められました。子どもはおはぎが好きなのでたくさん食べます」と笑っていた。

丹波市内でも「こと」行事を営むところは少なくなったが、複数の集落で続いている。1―2月と、時期は違うが、ぼたもちを食べる点は共通している。

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