コロナで店打撃、広がる市民の支援 持ち帰り情報発信や”前払い”チケット 「どんなことでも取り組むとき」

2020.04.19
ニュース丹波篠山市地域

 新型コロナウイルスの感染拡大と緊急事態宣言を受けて、外出する人や観光客が激減し、兵庫県丹波篠山市内の飲食店などが大きな打撃を受けている中、市民有志らが、地域の店舗を応援する取り組みをスタートした。市も経済支援対策を準備しており、市民らは、「いろんな形の支援の仕方があっていいし、今は緊急事態。このままでは大好きなお店がなくなってしまうこともあり得る。どんなことでも取り組みを始めるとき」と協力を呼び掛けている。

フェイスブックで情報発信の場

「あの味をおうちで楽しもう TakeOut丹波篠山」を作成した原さん(右)と玉垣さん=2020年4月15日午前11時32分、兵庫県丹波篠山市立町で

原亜理沙さん(29)と玉垣綾子さん(30)は、インターネット上の交流サイト「フェイスブック」内に持ち帰り商品を販売している飲食店と利用客をつなぐグループページ「あの味をおうちで楽しもう TakeOut丹波篠山」を作成。開設から3日で飲食店数は15店、参加者数は200人超となっている。

 これまでから持ち帰り商品を販売していたり、新たに弁当や総菜などの販売を始めた市内の店舗が、商品の説明や営業時間、事前予約の要不要などを自由に書き込める。
 誰でも閲覧・参加することができ、実際にテイクアウト商品を買って食べた人が、感想を投稿したり、おすすめの店舗も書き込める。
 17日時点でピザや弁当、サンドイッチ、総菜、日本酒など、さまざまな商品を販売する店舗が投稿している。
 2人は、市内の飲食店の利用客が減り続ける中、収入が半分以上減ったという声を聞いたり、全国的にもテイクアウトの流れが起き始めていることを知り、「どうにかして市内の店の取り組みを発信できないかと考えた」という。
 思いついてからページ作成までに要した時間はわずか1時間程度。「費用もかけず、発信する場所を作っただけだけれど、今はどんな取り組みでも早くやるとき」と言い、「お店の方が投稿してくださったり、たくさんの人が参加してくださっていることがうれしい」とほほ笑む。
 現在は飲食店が情報を投稿しているが、学校給食の中止や飲食業界の低迷で打撃を受けている農家なども野菜や果物などの販売を呼び掛けることができる。
 2人は、「ゴールデンウイークは飲食店にとっては書き入れ時だったはず。これからさらに投稿を呼び掛け、閲覧数を増やし、少しでもお店の力になれたら」と言い、「外出自粛が広がる中、テイクアウトをするにも外出しなければならないので、迷うところもあるけれど、終息したときに『行きたいお店』としてチェックしてもらうのにも役立ててほしい」と話している。
チケットで店を現金支援

チケット販売で店舗を支援する取り組みを企画した中村さん=2020年4月16日午後1時29分、兵庫県丹波篠山市黒岡で

中村伸一郎さん(55)が企画した取り組みは、「コロナに負けるな! つながる丹波篠山+プロジェクト」。利用客の減少や営業自粛で困窮しているお店を応援するため、常連やファンが事前に、長く使える「チケット」を購入することで現金での支援につなげる取り組みで、16日からスタートした。

 取り組みに参加する店舗は、5000円チケット(1000円×5枚つづり)か、1万円チケット(2000円×5枚つづり)を販売。バラ売りもできる。
 新型コロナウイルスの影響で外出する人や観光客が激減する中、馴染みの利用客にとっては”前払い”の形で、賃料や従業員への支払いなどで疲弊する行きつけの店を支援する仕組みだ。
 飲食に限らず、どんな業態でも参加できる。チケットは購入した店でのみ使うことができる。すぐに店舗で使うことができるほか、現在は、営業を自粛しているならば再開後に使用できるようにする。また、店ごとに割引や特典をつけることも可能。
 ただし、影響が長引き、チケット販売後に店が閉店・倒産する可能性もあり、店舗、購入者双方がこの「リスク」をしっかりと理解した上で販売する。
 中村さんは、「リスクはあるが、そうならないための取り組み。あくまで応援したい店がある人の善意ということを理解してほしい」と話す。
 高知で始まった取り組みで、現在、全国各地でスタート。関西では中村さんの取り組みが初めてになるという。
 営業を自粛したり、テイクアウトなどに業態を変更する店が出始めたことを知った中村さん。岩手で同プロジェクトに取り組んでいる知人がおり、「丹波篠山でも」と、各地の取り組みを参考にスタートした。
 現在、市内6店舗が参加しており、各店でチケットの販売を始めている。参加店も随時、募っている。
 チラシやチケットなどの印刷費用約1万円は中村さんの”手弁当”。それでも「1万円で地域の応援につながるならば」と言い、「参加を呼び掛けたお店で商品をもらったこともあるので、それで満足です」とほほ笑む。
 参加店からは、「ありがたい取り組み」「みんな苦しいので、自分だけ『助けて』とは言いにくかった」などの声が上がっているという。

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