子どもたちへ「”秘密”持って」 元文化庁長官の言葉 コロナ後の新時代楽しみに

2020.05.16
ニュース丹波篠山市地域

「みなさんは『新しい時代』を生きることになるでしょう」と語る垣内館長=2020年5月13日午後2時14分、兵庫県丹波篠山市小田中で

新型コロナウイルスに伴う休校が続き、長い時間を家で過ごす子どもたちにとっては“試練”ともいえる時が続いている。兵庫県丹波篠山市小田中にある子ども博物館「篠山チルドレンズミュージアム」の館長で、兵庫教育大・大学院非常勤講師の垣内敬造さん(58)に、休校中の子どもたちへメッセージを送ってもらった。

子どもは学校へ行って勉強する権利が憲法で保障されているにもかかわらず、今はそれが守られていない“異常事態”。友だちにも会えなくて、つらいだろうなと思います。

しかし、この異常事態には「大人もびっくりしている」ということを、子どもにも分かってほしい。大人も困っていて、どうしたらいいか分からない。「親も困っている」ということを、想像できる子になってくれたらと願っています。

新型コロナウイルスのニュースを見ていると、入国拒否などの話題に「国どうしの仲が悪くなっているのかな」と思ってしまうかもしれません。しかし、今後、薬を開発したりするときには、国どうしが仲良くしていないと、コロナには勝てないでしょう。対面距離は離しながらも、「心」は近く持っていないといけない時代がきていると思います。

そのうち事態が落ち着いて、学校に行ける日がくるでしょう。しかし、そのときには、社会が変わっている可能性があります。衛生にいっそう気をつけたり、インターネットを使ったリモート授業が一般的になるかもしれません。

みなさんは「常識」や「普通」が変わる時代を生きていくことになるでしょう。新しい時代を生きていくんだと想像すると、楽しみでもありませんか?

大人たちは“古い時代”を生きてきました。新しい時代は子どもたちに託さなければなりません。「大人たちの見本になるんだ」という気持ちで生きていってもらえると、楽しみも出るのかなと思います。

とはいえ、休校が長引いていることで、我慢の限界を越えてしまうことがあるかもしれません。そのときに、とっておきの秘策があります。

それは「秘密を持つこと」です。

篠山チルドレンズミュージアムの名誉館長で、心理学者だった故・河合隼雄さん(元文化庁長官)は「子どもの成長にとって、秘密を持つことが成長のカギ」とよく言っていました。一般的に、大人からすると、子どもが秘密を持つことは良くないと思われています。しかし、河合名誉館長は、子どもが「自我」「自分」というものをつくるとき、「秘密」がとても大切な要素だと考えていました。

もちろん、危険なことや罪になるような秘密はいけませんし、バランスが大切です。

例えば、引き出しの中にきれいな石を集めたり、家の中で家族が知らない自分だけの場所を見つけたりしてみるのはどうでしょうか。また、お話を作ってみて、誰にも言わずにノートに書いておくのもいいかもしれません。退屈で仕方がなくなったら、秘密を集めて育ててみると、楽しい時間が過ごせるのではないかと思います。

ちなみに、「秘密を持つ」という“奥の手”は、実は秘密です。あまり人に言わないで下さいね。

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