宅食増で「ビーフン」にも熱視線 冷凍加工工場の稼働率120%に コロナ受け「過去最高レベルの増産」

2020.06.02
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兵庫県民おなじみの「ケンミンの焼きビーフン」

新型コロナウイルスの影響による外出自粛やテレワーク導入などで、自宅で過ごす人が増えたことを受け、手軽に食事がとれる冷凍食品の需要が急増している。米を使った麺「ビーフン」のトップメーカー「ケンミン食品」(本社・神戸市)が兵庫県丹波篠山市の篠山工場で製造している冷凍ビーフンも同様で、製造ラインがフル稼働状態。「過去最高レベル」の増産となっており、同社は、「稼働率120%の状態だが、需要がある以上、なんとかしてご家庭においしい商品を届けたい」と話す。県民にとってはおなじみの味に全国から注目が集まっている。

 

 今年で発売から60周年を迎えた同社の焼きビーフン。「最も長く販売されている焼きビーフン」としてギネス世界記録にも認定されている。近年では小麦などを含まない「グルテンフリー」のブームを受け、海外への輸出にも力を入れている。

フル稼働状態になっている篠山工場(同社提供)

乾麺タイプはタイの自社工場で製造しており、篠山工場では自社製ビーフンを調理し、冷凍加工した製品を製造している。

 2018年度の事業別売上では、冷凍ビーフンが23・8%とトップ。篠山工場が主力商品の製造を担っている。
 冷凍タイプは、ゆでたビーフンをしょうゆやオイスターソース、隠し味のフライドオニオンで味付けし、豚肉、キャベツ、ニンジン、タマネギ、きくらげ、ピーマンなどの具材と一緒に炒めたもの。電子レンジで温めるだけですぐに食べられる。
 生活協同組合(生協)などを通じた販路があり、全国で商品を購入できる。本社があることから兵庫県民に馴染みが深いが、実は個人消費トップは九州地方。中国、四国と続き、近畿は4位。
 96人が勤務する篠山工場では通常、ビーフンやはるさめなどの冷凍食品を1日約12トン、6万5000―7万食製造。以前からほぼ100%の稼働率で推移してきたが、新型コロナの影響により、2月から需要が増加し、3月には20%の増産に入った。緊急事態宣言が発令された4月にはさらに前月比20%増となっている。
 また、自社の電子商取引サイト上での3月の販売実績は前月比約9割増加。1999年の自社サイト開設以来、「短期間にこれほどの伸びを見せたのは異例」という。
 通常の体制では生産が追い付かないため、普段は休業日の土曜日や祝日も稼働。従業員には5000円―1万5000円の特別手当を支給した。
 また、製造工場から感染者を出さないため、普段以上の衛生管理を徹底。毎朝の検温はもちろん、本社などとの人の往来を避け、来社も控えてもらっているという。
 同社は、「都市部では新型コロナの影響で、スーパーにも行きづらく、休校中の子どもたちが家にいる家庭もあり、毎日、食事を作るのは大変。ビーフンに限らず、冷凍食品の需要が高まっている」とし、「冷凍ビーフンは具材も入っていて、米粉なのでカロリーも低い。包装パックに厚みもないのでたくさんストックできることなどから選んでいただいているよう」と分析する。
 また、「今回の外出自粛を機に商品を知ったという声もある。リモートワークの導入など、今後も自宅で仕事をする体制が続く可能性もあるので、ビーフンの需要も高いまま推移してくれれば」と期待している。

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