古民家で天然酵母パン 有名店の職人が移住しオープン 「自然いっぱい、人も良く夢のよう」

2020.07.11
地域観光

築約150年の古民家を改装、12日からオープンする伊勢成人さん(右)と千佳子さん=2020年7月6日午後零時51分、兵庫県丹波篠山市福住で

大阪市天王寺区で13年間、天然酵母を使ったパン店として人気を博していた伊勢成人さん(49)が12日、兵庫県丹波篠山市福住の国重要伝統的建造物群保存地区内にある築約150年の古民家を改装した店舗で「なりとぱん」をオープンする。4月中旬にオープンする予定だったが、コロナ禍で、3月から商品を絞ってテークアウトのみ販売していた。伊勢さんは「福住の町並みや建物を感じてもらい、ゆったりした時間を過ごしてもらえれば」と話している。

こだわりの素材で作ったパン

設計を担当した、まちなみ保存会協力建築士の才本謙二さんによると、江戸末期の建物で、かつて宿場町だった町屋の特徴を色濃く残しているという。建築当初の大きな梁を残し、使われていたつるべを入り口近くに吊るし、床板を磨いてカウンターにした。カウンターに7席、外にテーブル2台(8席)を用意した。テーブル席でテークアウト商品も食べられる。

石臼でひいた有機小麦、有機レーズンからつくった酵母、有機の地野菜、福住の水など、こだわりの素材で作った食パン、クロワッサン、フランスパン、サンドイッチ、菓子パンなど15種類ほどを揃える。

イートインではサンドイッチ、スープ、デザート、近くのコーヒーショップ「マグナムコーヒー」のコーヒーか、紅茶をセットにしたランチセット(2200円、午前11時半から限定20食ほど)を提供する。

伊勢さんは大阪府枚方市の出身。子どものときに通っていた店の影響で、パン店へのあこがれがあった。高校を卒業後、大手パンメーカーに就職。サンドイッチなどには料理の技量も必要だと感じ、和食店でも修業した。

知人が立ち上げた大阪・玉造のパン店で10年近く朝から晩までパンを焼き続け、1日に500人が来店するほど地元客に愛されたという。

2007年、妻の千佳子さん(47)の実家に近い天王寺区で「Cocoro」を開業。天然酵母と国産小麦のほか、週に1回、和歌山県へ地下水をくみに行くほど素材にこだわった食パンやクロワッサンなどで人気となった。

取引していたマグナムコーヒーが18年2月に丹波篠山市福住で開業。伊勢さんはパンを届けた際に、福住の人たちと触れ合ううち、「開放的で、すがすがしい福住の自然、風景、町並み、気さくな人々」に引かれ、すぐに移住を決断。昨年12月、常連に惜しまれつつ天王寺区の店を閉じ、1月に移住した。

千佳子さんも、「自然がいっぱいで人も良くて、夢か現実かと思うほど楽しい毎日」と福住を気に入っている。

営業時間は午前10時半―午後3時半。水、木曜定休。

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