「露出している顔も洗うように」 ”最前線”救急出動の消防署 マスク備蓄のため1日1枚【コロナ禍・地域支える人々】

2020.07.17
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「119番通報段階で、できれば傷病者はマスクをつけ、換気して隊の到着を待ってほしい」と話す安達さん=2020年7月5日午後5時4分、兵庫県丹波市柏原町母坪で

今年に入り、猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症―。緊急事態宣言の発令などをへて、全国各地の感染者数は小康状態になっているものの、東京では再び増加傾向にあり、「第2波」が懸念されている。感染拡大からこれまで、兵庫県丹波篠山市、丹波市の地域社会を維持するために奔走した人々に当時を振り返ってもらい、今後の備えを聞いた。今回は丹波市消防署救急第1係長の安達直浩さん(47)。

正確な情報を伝えることが、現場対応する部下の安心につながると考え、県立丹波医療センターや保健所、他の消防本部から情報を集めた。

消防署の感染対策の始まりは早かった。1月17日に消防庁から、日本人の感染者が出たので感染予防を徹底するよう通達があり、その日から全ての救急出動に、サージカルマスク、プラスチック手袋、不織布ガウンなどを着用する「標準感染予防策」を講じた。

どんな病気で倒れているか分からない傷病者に接する隊員は、感染症予防のスペシャリスト。装備を備蓄しており、手洗いやうがいに加え、露出している顔も洗うようにした。

唾液や粘液から感染する危険性がある気管挿管を伴う心肺停止の傷病者と接する際は、生物化学災害用のN95マスクを着用した。発熱患者を運んだ救急車は、アルコール消毒した。

コロナ疑いの患者は、感染症指定医療機関の丹波医療センターが受け入れてくれた。センターに、様々な相談に乗ってもらった。1例だけセンターで受け入れができず、収容先が見つからない救急車が90分間現場から動けない事案があった。傷病者は発熱はしていたものの、コロナ疑いではなかったことが後で分かったが、「センターが受け入れてくれることがどれだけありがたいことか、改めて身にしみた」と言う。

第2波に備え、少しでも多く備蓄できるよう、以前は出動ごとに交換していたマスクを、極力1日1枚に抑えることを今も続けている。「119番通報段階で、できれば傷病者はマスクをつけ、部屋の窓を開けて換気し、隊の到着を待っていてもらえれば」と市民の協力を求めている。

結果的に第1波では、感染者の搬送事案はなかった。「1事案、1事案適正に処置している。陽性となった人を運んでも、しっかりやってくれると信じている」。

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