患者”いきなり”来る開業医 「最悪」想定し備えるしか 「パンデミックは必ずまた来る」 【コロナ禍・地域支える人々】

2020.07.11
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新型コロナ第1波の対応などを語る芦田さん=2020年7月2日午後1時2分、兵庫県丹波篠山市大沢で(掲載写真は撮影時のみマスクを外してもらっています)

今年に入り、猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症―。緊急事態宣言の発令などをへて、全国各地の感染者数は小康状態になっているものの、東京では再び増加傾向にあり、「第2波」が懸念されている。感染拡大からこれまで、兵庫県丹波篠山市、丹波市の地域社会を維持するために奔走した人々に当時を振り返ってもらい、今後の備えを聞いた。今回は丹波篠山市医師会長で、内科医師の芦田定さん(64)。

感染拡大当初、不安をあおらないようになのか、テレビなどで「風邪みたいなもの」という人がいたが、中国の重症化率や拡大のスピードを見れば、「これはパンデミック(感染爆発)になる」と深刻に見ていた。

医院では外来の動線や診察時間を分けたほか、2カ月ほど前から緊急事態宣言が解除されるまでは電話による診察も行った。

自分やスタッフが感染したり、感染者と濃厚接触があったりした場合、2週間は医院を閉めないといけない。丹波篠山で開業して20年になるが、自分の都合で休んだのは「親知らず」を抜いたときの1回だけ。長く診察している人もおり、もし閉めることになればどう対応すべきかと悩んだ。

現在は通常の診察体制に戻しているが、感染への注意は続けている。マスクやフェイスガードはある程度手に入るようになったものの、医療用のサージカルマスクや感染防止のエプロンはいまだに手に入らない。エプロンは今あるものがなくなればカッパになる。

開業医は地域医療の最前線にいる。大きな病院では開業医からの情報を受けて警戒することもあるが、開業医のところには患者が“いきなり”来る。

実際、これまでに3、4人ほどコロナを疑う人が来た。結果的に通常の肺炎や風邪だったが、当時はPCR検査をお願いしてもやってもらえなかった。現在は診療所からの紹介でも検査できるようになった。検査体制が整ったことは拡大防止につながると思う。

医師会として行政から市から意見を求められる場面もある。丹波篠山ABCマラソン(毎年3月開催、1万人がエントリー)については、医師会として中止するよう意見した。とにかく、「最悪」を想定して対応するしかない。プレッシャーは感じていないが、医師会として地域に何ができるかという責任感は感じている。

丹波篠山は感染者を出すことなく第1波を乗り切った。何より、みなさんが感染に気を付けた。「3密」を避けたり、ソーシャルディスタンスをとったりするなど、注意力が高まっていた。

今年はインフルエンザも少なかった。これはとてもラッキーなこと。インフルエンザなら鼻水をとって検査しないといけないので、医療従事者の感染リスクも高まっていた。

今後の備えとして、丹波地域からは通勤で大阪などの都市部へ行く人も多く、どこにでもリスクはある。備えるには、これまで通り「3密」を避け、マスクをし、お店では消毒、家では手洗いする。これを続けて感染を防ぎながら、社会生活を続けるのが理想。几帳面でルールを守り、清潔好きな日本人ならできると期待している。

得られた教訓は「パンデミックは必ず来る」ということ。コロナが終息したとしても、いつかまた何かが来る。

2002年から感染が広まったSARS(重症急性呼吸器症候群)で被害を受けた台湾や韓国は、今回のコロナでもすばらしい対応をしている。これは前回の教訓があったからだ。私たちも今の状況を忘れないようにしなければならない。

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