みんなでつくる「住みよい村」 山工事し土砂不安の高齢者を救う コロナ禍に「積立金」崩し支援

2020.08.24
ニュース丹波の豪雨災害丹波市地域地域

里道の拡幅工事に取り組む住民たち=2020年5月24日午後4時21分、兵庫県丹波市市島町北岡本で

大雨のたびに裏山から流れ込む水と土砂に悩んでいた独居高齢者の不安を解消しようと、兵庫県丹波市市島町の北岡本自治会(黒田拓治会長)の有志が、5月から裏山の里道の拡幅工事に取り組んでいる。重機で斜面を削って傾斜を緩やかにし、道幅を広げることで水の勢いを弱めている。コロナ禍で自宅にいた若い衆も一肌脱ぎ、「誰もが住みよい村づくり」を実践している。

黒田会長によると、山沿いにある独居高齢者宅を含む数軒は、大雨のたびに山林出水被害に遭っていたという。個人では対策が難しい現状を自治会で共有し、困っている人を助けようと地域で取り組んでいる。

県の森林・山村多面的機能発揮対策事業を活用。ショベルなどの重機を借り、幅1メートルだった里道を4メートルに拡幅した。200メートル以上に渡って作業し、梅雨入り前に大雨の影響を受ける個所はいったん終了。今後、さらに土のうなどで土砂対策を強化するほか、他の作業道の整備にも取り組む。

平日は少人数で作業する日もあったが、土・日曜は若手も参加。コロナ禍の影響を受けて自宅にいた現役世代も協力し、中には建設会社に勤務する「プロ」も参加して作業をはかどらせた。整備に伴って出た木は出荷し、収益を日当として参加者に還元している。

同自治会は2014年の豪雨災害で、床上浸水などの被害が発生。災害後も多くの流木が山に残ったままで危険な状態が続いていた。災害の少ない山をつくろうと語り合い、若手有志が中心になって森林整備を開始。植樹などもして散策が楽しめるように手を入れ、山の価値を上げる活動に力を注いでいる。

普段の森林整備活動がベースにあるため、延べ100人以上が今回の作業に従事。黒田会長は「住民みんなが安全に暮らせるようにしたい。多くの協力があり、熱心に取り組んでくれてありがたい」と話している。

積立金取り崩し申請者へ

また、同自治会はこのほど、新型コロナウイルスの影響で収入が減った地域住民を応援しようと、災害時のインフラ補修や公民館改修などを目的に30年ほど前から積み立てている「積立預金」の一部を取り崩し、申請者に支援した。

各世帯が月3000円を積み立てている「個人積立預金」。過去には各家庭の下水道工事代を補助したり、公民館の改修費に充てたりした。

住民の要望もあり、役員会で「積立金」の活用を検討。コロナ禍を「災害」と位置づけて活用を認めた。取り崩しは積立額の40%未満とし、1戸最大20万円ほどを支援した。40戸中10戸が申請した。

会計の女性は、「大変な時期を乗り切るのに有効な策になれば」と話している。

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