トレイルランで世界奪取を ”逸材”が海外レース参戦 「5年後までに拠点を欧州へ」

2020.08.05
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2018年の「ウルトラトレイル・マウントフジ」で、ニューヒーロー賞の盾を掲げる中谷さん=山梨県で(中谷さん提供)

山野を駆け抜ける競技「トレイルランニング」で、兵庫県丹波市の中谷亮太さん(29)が自宅の裏山を練習拠点に、世界大会の頂点を目指している。これまで勤務していた京都市の会社を退社し、“トレラン”一本で勝負することを決め、地元に戻って技術を磨いている。一昨年には、世界10大レースの一つで新人賞に輝いた逸材。「競技者として高みを目指す。丹波から世界を取りたい」と意気込んでいる。

22歳で競技を始め、これまで数々の大会で好成績をマーク。一昨年、富士山麓を168キロ駆け巡るレースで、ワールドツアーに組み込まれている「ウルトラトレイル・マウントフジ」で、今後の活躍が最も期待される選手に贈られる「ニューヒーロー賞」を獲得。多い年で年間20レースを走った。

これまで、トレイルランニングの専門店「トレイル フェストランニングカンパニー」(京都市)に勤務。同店のトレイルランニング講習会の講師を務めながら、各地の大会に出場してきた。競技者として、経験したことがない海外でのレースに参戦したり、より質を求めた練習に打ち込みたいという思いが芽生えたという。

中谷さんによると、丹波の山々は低山なのに急峻で、トレランの練習環境には適しているという。「アルプスと同じような練習ができる」と言い、自宅の裏山の登山道を周回するコースを走り、最近では31時間かけ116キロを走破したという。

最終目標は、トレランレースの最高峰「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン」(UTMB)の100マイル(170キロ)部門で王者になること。毎回、上位を占める欧州勢が高い壁となって日本人出場者に立ちはだかっている。

同大会と同じような環境で練習したいと、5年後までに拠点を欧州に移す計画。「UTMBでは、日本人は過去3位が最高。若さだけでは勝てない。多くの経験を積みながら、世界で勝負したい」と力を込めた。

400キロを走破し、支えてくれた仲間と喜ぶ中谷さん(中央)=大阪府泉南郡で(中谷さん提供)

自身最長400キロを115時間で走破

中谷さんは7月21―25日、自身最長の距離を走るトレイルランニングに挑戦。神戸市の須磨浦公園をスタートし、大阪府泉南郡の「みさき公園駅」に至る400キロを115時間かけてゴールした。

走路のほとんどは山中で、一部はロードも走った。神戸から宝塚、川西、池田、箕面、嵐山と走り続け、山科や枚方、生駒山から和歌山、みさき公園へと果てしない距離を駆け抜けた。仲間もサポートに入り、励みになったという。

大きなハプニングは2度。序盤100キロ地点あたりでスマートフォンが壊れ、詳しいルートが分からなくなったという。

仲間のサポートもあって乗り超えたが、次なるアクシデントは約300キロ地点。夜間の山中で時間40ミリの大雨により視界と体温を奪われ、さらには雨水がシューズに入ったことにより足裏の皮がふやけ、けがをしてしまう可能性もあった。「マイナス思考になったが、やめようとは思わなかった。人生に訪れる試練のように感じた」と振り返る。

ゴール間際、うれしさとともに、もう終わってしまう「さみしさ」を感じたという。「いろんな人が応援に駆けつけてくれて、人の力のすごさを感じた。サポートしてくれた人に感謝したい」と話している。

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