勇気を出してオープンに 絶望を希望に替えて みんなで幸せに生きる【認知症とおつきあい】(9)

2020.11.04
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認知症と診断されて、絶望を希望に替えて生きている人がいる。出会ったのはもう7年以上前になる。

最初は、居るはずの無い人が見える、道路に緑色の線が見えると訴えての受診だった。画像検査や心理検査など様々な検査の後、診断結果は「レビー小体型認知症」。記憶障害は比較的ゆっくり進むが、居ないはずの人や物が見えると訴える「幻視」がある。時には、小人が居る、小動物が見えるという人もある。

診断の結果は本人や家族にとってつらいものだったに違いないが、自身の幻視が他の人には見えないことを自覚していた本人にとっては、病気が原因であったことに納得ができたようだった。

診断後、医師からを本人に自宅に閉じこもらず人と交流すること、脳を適度に刺激すること、身体機能の低下を予防するために運動や外出を心がけることなど、生活指導があった。

家族には、幻視の訴えを否定せずに聞くこと、日常生活では徐々に今までできていたことができなくなってくるので、本人に恥をかかさないよう支援することが大事との説明がされた。さらに家族だけで介護しようとするとストレスがたまる、介護サービスや社会資源を利用し、親族や地域の人にオープンにすることなどのアドバイスがあった。

それから、夫婦は体操教室や高齢者大学、カラオケ、コーラスなど様々な場に2人で出掛けるようになった。

認知症であることをオープンにしたことはとても勇気のいることだった。地域の人から奇異な目で見られるのではないかと不安があったが、夫が元気ですごせるように、少しでも認知症の進行が抑えられるよう家族、親族の理解と協力を得て夫婦で頑張ってきた。

認知症になっても希望を忘れない家族の温かい支えと本人の前向きに生きる姿に心を動かされる。認知症と戦っている人も、認知症とともに生きていこうとしている人も、その人を支えて生きる人も、みんなで幸せに生きていく方法を探していきたい。

寺本秀代(てらもと・ひでよ) 精神保健福祉士、兵庫県丹波篠山市もの忘れ相談センター嘱託職員。丹波認知症疾患医療センターに約20年間勤務。同センターでは2000人以上から相談を受けてきた。

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