「商品券2万円交付」採決至らず 5万円公約修正、賛否拮抗か 市議「市民の声聞きたい」

2021.01.15
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 兵庫県丹波市議会の予算決算常任委員会は15日、同市の林時彦市長の選挙公約「新型コロナウイルス対策として全市民に現金5万円給付」を修正した、「商品券2万円交付」事業を含む一般会計補正予算案を審議したものの、財源確保への疑問や今後の財政に与える影響、交付がコロナ対策になり得るのかなどを巡って紛糾。市当局を交えた一定の審議を終えたものの市議は結論を下さず、「市民の声を聞く時間がほしい」として採決を見送った。市当局退席後、議員のみで行った討議では賛否の意見が拮抗していた。18日午前9時半から開く同委員会で採決する。

商品券2万円分の交付事業案は、総額13億2948万1000円。国のコロナ対応地方創生臨時交付金5億8000万円や、市の予算の組み替えなどで捻出する。林市長は選挙時、市の新庁舎建設計画を凍結し、庁舎建設に充てるために市が積み立ててきた庁舎整備基金(約22億円)を財源に、全市民に5万円を給付するとしていた。

同委員会では、コロナ対策としての効果、積み立て予定だった新庁舎建設基金2億円(未執行)や可決済みの水道料金の基本料金免除(今年2、3月予定)取りやめ分を商品券交付事業の財源に充てる妥当性などについて質問が相次いだ。

市は商品券交付にあたり、交付金額を1―5万円でシミュレーションした上で、2万円が妥当と決めたと説明。コロナ対応地方創生臨時交付金を最大限充当した上で、財政調整基金の残高を念頭に置き、「今後の財政運営に支障をきたさない範囲で商品券の交付金額を決定した」とした。

現金ではなく商品券交付としたことについては、過去の「プレミアム商品券」発行は経済効果があったことなどを理由とした。

積み立てる予定だった庁舎整備基金2億円を財源に充てることについて、市は「基金は確保していた方が良い」という姿勢を示しつつも、「新庁舎の建設は凍結。だから積み立てはやめる」とした。現状の分庁舎方式を継続するため、数年後に必要となる氷上庁舎と春日庁舎の大規模改修費を「計約16億円」とし、「大金が必要なのは分かっている。改修のために新たな基金創設が必要かどうかは今後検討する」とした。

一方で、水道基本料金免除取りやめについては、林市長が歩み寄りを見せた。議員から、免除取りやめについて再考を促された林市長は、手洗いによる感染対策の有効性を理由に、「新たに実施することを考えたい」と発言。4月以降の減免に含みを持たせた。

市議から施策立案の根拠を問われた林市長は、「(選挙前の)市民の声が判断材料になった」と説明。市議から「今と当時の状況は違う。自身の思いだけでの立案はいかがなものか」と批判した。

議員のみによる自由討議では、主に「公約」「コロナ対策」の視点から、論点を整理して協議。「公約ありき」で財政にしわ寄せがいっているのではとの指摘もあったが、「満額でなくても、公約実現に向け努力するのは当然だ」と擁護する声も上がった。

交付対象は全市民のため、「本当に支援を必要とする人に届けるべき」という意見の一方で、線引きの難しさを挙げる市議もいた。国のコロナ対応地方創生臨時交付金は、3月末までに予算化しなければ返納しなければならない点を考慮し、商品券交付を実現した上で、今後、交付が予想される国の交付金を活用して「本当に支援が必要な人」への追加支援施策を検討すべきという声も上がった。

一方で、緊急事態宣言下にあって、今後、必要になると見込まれる施策に予算を投じるべきという声もあり、商品券交付事業に疑問を呈する市議もいた。

その後、「採決できる状況にない」とし、再び市当局を交え疑義をぶつけたものの、採決には至らなかった。

林市長は丹波新聞社の取材に対し、「行政の継続性を考えた時、2万円という結論だった。公約からは減額という声も理解するが、市民に寄り添うことを大事したい」とコメントした。

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