コロナとどう向き合うか 医学博士が本出版 科学的事実を分析 「世界規模で共に戦う」

2021.01.12
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新型コロナウイルスの収束に向けた提言などをまとめた本を出した、草山診療所の崎谷所長=兵庫県丹波篠山市本郷で

京都大学医学博士で、兵庫県丹波篠山市草山診療所の崎谷満所長(66)がこのほど、「新型コロナウイルスにどう向きあうか―科学的事実に基づくポストコロナ時代への道筋」と題した本を、昭和堂から発行した。コロナ終息に向けた提言や、「ポストコロナ」時代の展望を、国内外の研究者の論文や新聞記事など400を超える文献を参考にし、2カ月でまとめた。白血病などのウイルスについて約40年間研究してきた崎谷所長。「科学的情報を専門的に分析することで、いまだ拡大を続けている新型コロナウイルス感染症に対して全世界規模で共に戦うためのあり方を示す」ことが発行の目的という。

同書は(1)新型コロナウイルスの起源(2)感染拡散(3)感染経路・検査・ワクチン・治療(4)感染制御(5)ポストコロナ時代への提言―の5章からなる。

第3章の「ACE2分布」の項目では、新型コロナの感染を受けやすい部位は「ウイルス受容体として機能するACE2の分布によって推定される」と紹介。ウイルス受容体が上気道や眼、消化管などに存在することから、マスクやゴーグル、手袋などが感染予防策として有効としている。

第5章の「言論の自由の確保」の項目では、「現場の専門的な医学情報が専門家の間で共有される必要がある」とし、思想や言論などの自由を確保した上で、情報公開のためのデジタル化やネットでのオープンアクセスが必須としている。

そのほか、新型コロナの起源の推定、中国から世界各国へ感染が広がった経緯、主要国の感染拡大状況などについても触れている。

マスクをしない状態でのフェイスシールド着用など、不完全な感染対策が気になっているという。「正しい知識を持って感染予防に努めてほしい」と呼びかけている。

ウイルスの研究の第一人者で、京都大学名誉教授の日沼頼夫さんに師事しながら、がん患者に、身体的だけでなく、精神的な治療も行うサポーティブケアの確立に取り組んできた。がんの早期発見から治療、家族への心のケアまでを行う実践の場として、3年前に草山診療所へ赴任。10人ほどの患者を看取ってきた。

自宅のある神戸から往復5時間かけて診療所へ通う毎日。「しんどいけれど、やりがいの方が強い」。丹波篠山にも馴染んできたようで、「都会に近く、しゃれた店も多くて、創造性豊かなまちですね」とほほ笑む。

1600円(税抜)。ネット通販サイト「Amazon」で購入できる。

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