絶滅の淡水魚「どこかに」 ”ぎょぎょぎょ”さかなクン講演 トゲウオ「ミナミトミヨ」語る

2021.03.26
地域自然

時おり飛び跳ねるなどコミカルな動きをしながら、魚の生態や環境について話したさかなクン=2021年3月20日午後2時6分、兵庫県丹波市春日町黒井で

兵庫県丹波市の「氷上回廊水分れフィールドミュージアム」のリニューアルオープンを記念した講演会がこのほど、同市内で開かれ、東京海洋大学客員准教授・名誉博士の「さかなクン」が登壇した。魚に関する豊富な知識を子どもたちにも分かりやすく伝え、自然環境の尊さも訴えかけた。魚のイラストを描きながら「ギョ(5)択クイズ」を出題し、正解者にはイラストをプレゼント。かつて丹波市にも生息し、絶滅した淡水魚「ミナミトミヨ」や、同県内では同市でしか生息が確認されていない「ホトケドジョウ」についても話し、来場者を最後まで引き付けた。要旨は次の通り。

「身近なお魚ほど大切に」

かつて丹波市に生息し、絶滅したとされる「ミナミトミヨ」のイラストを描くさかなクン

まずは「ミナミトミヨ」についてです。背中にとげがいっぱい付いていて、その後ろには柔らかいひれが付いていて、胸びれがあって、お腹にもとげが左右一対付いています。お尻にも1本のとげが付いています。そして、お魚さんが周りの岩(にぶつからないように)とか、仲間がどこにいるか(察知する)というセンサーの役割がある「側線」のところに、大きめのうろこがあったことが知られているみたいです。

魚の分類では、トゲウオという魚の仲間の、トゲウオ科になります。トゲウオ目には、意外なお魚「タツノオトシゴ」が含まれています。トゲウオ目のヨウジウオ科です。

ミナミトミヨに近い魚に「イトヨ」がいます。ミナミトミヨより背中のとげが少ないことで区別できます。「ハリヨ」という魚もいて、背中やお腹、お尻にもとげがあります。この魚の仲間は、お父さんが水草などで巣を作って、その中にお母さんを招いて卵を産んでもらって、お父さんが卵を守るという特徴がギョ(ご)ざいます。人で言うと「イクメン」ですね。

タツノオトシゴも、お父さんが卵を守ります。お母さんが卵をお父さんに預け、お腹の袋「育児嚢」で卵を大事に育てます。そして、お父さんが赤ちゃんを産みます。

「イトヨ」は、研究者が調べたところ、大発見があったそう。イトヨは湧き水がある所にいるのと、海に旅をするイトヨがいて、出会うことはないそうですが、東日本大震災の大きな津波によって、海に旅するイトヨが岸まで上がってきて、湧き水で暮らすイトヨと交雑したということです。とてもたくましいお魚で、大きな震災があっても命をつないできた。だから、もしかすると、ミナミトミヨはどこかにいてくれているんじゃないかと願っています。

ミナミトミヨはもちろん、ドジョウやサケ、タナゴの仲間など、淡水で暮らすお魚は非常に繊細な生き物で、湖や湧き水の環境がちょっとでも壊れてしまうと、数が減ってしまったり、もう二度と出会えなくなったりすることにつながってしまう。身近なお魚ほど大切にしなければいけないんだなという気持ちになります。

淡水で暮らすお魚の中で特にかわいいと思うのは、「ホトケドジョウ」です。ずんぐりとしたお目めにおちょぼ口、見ていて癒やされます。おひげの数は8つ。お魚のおひげは「味蕾(みらい)細胞」という、私たちの舌にもあるような、味が分かる細胞があります。

ホトケドジョウは、湧き水が湧くような本当にきれいなお水(が好き)で、夏でも16度よりも高くなると元気がなくなっちゃうそうです。日本の各地でも数が減ってしまって、天然記念物に指定されている場所もあります。大切にしないと、二度と会えなくなったら大変ですね。

丹波では、日本のタナゴ(の種類)にほぼ、みんな出会えると教えてもらいました。タナゴは面白い特徴として、大きな二枚貝に卵を預けます。水の汚れは水底にたまってしまうので、そうなると最初に貝が「苦しい」とパカッと開いてしまい、弱ったり死んでしまったりする。そうなるとタナゴたちは卵を産めなくて、共倒れになってしまいます。

メダカは、研究が進んで北の方に暮らすのと、南の方で暮らすのでは種類が違うそうです。「キタノメダカ」「ミナミメダカ」に分けられたそう。なんと、丹波に暮らすメダカはどっちもいるそうです。両方暮らしているということは、出会うこともあるので、交雑したようなメダカもいると教えてもらいました。丹波はメダカの起源の場所じゃないかと考えられるかもしれませんね。

大自然守る市民に「胸熱く」

今、問題になっているのは、ごみが増えてしまっていることです。水の中もごみがいっぱいです。沈んでいるごみも多いですが、レジ袋やプラスチックで出来た容器などは水を漂い、ミズウオやウミガメ、鳥、イルカ、クジラなど、いろんな生き物がクラゲと間違えて食べてしまうことが多くなっているそうです。

さらには、漂ったごみは浜に打ち上げられ、太陽の光で縮んだりして細かくなります。そうなると、やがて水に流され、海の中にもたくさん漂います。それは「マイクロプラスチック」と呼ばれて、小さなイワシなどがプランクトンと間違えてしまうことが分かっています。私たちはイワシなどを丸ごと食べる機会も多いので、ごみが増えると食卓に影響があるかもしれません。

私たちに今日からできることを3つ紹介します。まずは「食べ物を感謝していただきましょう」。感謝の気持ちを持ち、なるべく好き嫌いをせずに食べると健康につながるし、食べ残しをしなければごみも減って環境を汚しません。次は、「マイ○○○を持ちましょう」。マイバックを持って買い物に行けば、レジ袋を断れます。そうするとレジ袋がごみになることが減ります。マイボトルがあれば、ペットボトルのごみの削減にもつながるし、マイはしを持っていれば割りばしを使う機会も減ります。

そして「ごみは決められた場所に」。ごみをしっかり分けて、決められた場所に捨てましょう。まちにごみが散らばってしまうと、川や湖、やがては海に散らばってしまいます。

丹波市には、いろんな貴重な淡水魚がいるということを学ばせてもらいました。これは、丹波市の皆様が身近な大自然を大切にされているからなんです。ちょっとでも水が汚れてしまったり、環境が変わってしまったりすると、たちまち身近なお魚はいなくなってしまいます。これまでもきれいにしていただき、これからもきれいにしていただくという思いをいただき、胸が熱くなり、うれしいです。

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