松山選手求めた「澄んだ音」 マスターズ”制した”ボール 要望色濃く反映

2021.05.04
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市島工場敷地内のゴルフ科学センターで試打を行う松山選手(2020年撮影、住友ゴム工業提供)

今年4月のゴルフのメジャー選手権「マスターズ・トーナメント」を制した松山英樹選手が同大会で使用したボールが、兵庫県丹波市市島町の住友ゴム工業市島工場(山本浩正工場長)で製造されている。松山選手は、同社とボールやクラブ、グローブなどを使用する総合契約を結んでおり、道具に対して並々ならぬこだわりを持つことで知られる。これまで何度も市島に足を運び、敷地内にあるゴルフ科学センターで試打を行い、ボールに対するこだわりを要望。これに同社も応え、高水準のボールを生産することで、アジア人が初めて同大会を制する快挙を支えた。

「SRIXON Z―STAR XV」。同社商品開発部ゴルフボール技術グループによると、プロ選手の意向を反映したボールだが、中でも松山選手の要望が最も色濃いという。

松山選手がマスターズで使用したボールを手に、快挙を喜ぶ山本工場長(右)と開発リーダーの神野一也さん=2021年4月26日午前11時1分、兵庫県丹波市市島町梶原で

飛距離を重視しつつ、グリーン周辺ではスピンがかかり、コントロールしやすい特長がある。同社には多くの丹波市民も勤務しており、「世界一のボール」の製造に従事している。

松山選手がボールに求めたのは、パターで打った際の「澄んだ音」という。同社は周波数レベルで打音の大きさや高低も解析し、求めるものに近づけた。パッティングはボールでしかカバーできない部分もあることを伝えられたという。

松山選手はこれまで、何度も同センターを訪問。ボール開発の最終段階だった昨年5月には、芝が張り巡らされたテストコースで何度も試打を行い、弾道や飛距離などをその場で解析し、データを確認した。

山本工場長は「われわれが製造したボールが世界一になったと従業員一同、喜んでいるし励みになる。世界一になると注目を浴びる。これまで以上に品質管理を徹底したい」と話している。

松山選手は同社に対し、「このボールでなければ、特にショートゲームにおいて、多くのピンチを乗り越えることはできなかったと思います。アマチュアの時から、僕をサポートし続けてくれたことに感謝しています」とメッセージを寄せた。

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