障がいと生きた証つづる 自伝を出版、支援募る 「苦しむ人の支えに」

2021.05.15
地域

自伝の出版に向け資金協力を呼びかける前川さん=2021年5月10日午前11時48分、兵庫県丹波篠山市犬飼で

小児麻痺により、生まれつき全身に障がいのある兵庫県丹波篠山市の前川千恵子さん(59)が、自伝「雨あがりの人生」(1300円)を出版する。幼い頃から障がいが原因でいじめに遭い、つらい思いを経験。自身の体験を本にすることで、「今、苦しんでいる誰かの支えになりたい」と考えた。前川さんは「障がいを持って生きていくとはどういうことかを伝えるために生まれてきたのだと思えるようになった」と話している。6月4日まで、インターネット上で資金協力者を募るクラウドファンディングで、出版費用の支援を呼び掛けている。

自伝では、いじめや心ない好奇の目に何度も挫折しそうになりながらも養護学校の友だち、夫との出会いや、母親をかばう長男の言葉で心が救われたこと、障がい者団体が屋台を出す催し「愛がいっぱいのえんにち」の実行委員長を務め、充実感と達成感を得たことなど、これまでの半生を読みやすい文章でつづり、自作の挿絵を添えている。

幼い頃から「人に迷惑をかける障がい者は、何も言わず静かに生きていいくしかない」と思っていたという。

2008年に長女が歌手デビューして活躍すると、自分に対する周りの人の態度が温かいものへと変わっていくのに驚いた。「よかったね」「すごいね」と声を掛けてもらった半面、これまでとの違いに不信感も持ったが、自分の内面をもっと出していってもよいのかなと思うきっかけになった。

「障がい者への理解が進み、以前ほど差別的な発言や態度を見聞きすることもなくなった。周りが変わったのではなく、自分自身が変わったのかも」とほほ笑み、「生きた証しを残したいと思うようになった」という。

これまでに自身の生い立ちを振り返る講演を何度か頼まれたことがあり、その時の原稿をベースにしている。長女と同じように歌手デビューしたことが縁で知り合った小南泰葉さん(同県丹波市)に文章を直してもらい、半年をかけて文を練ってきた。

幼少期にいじめられた経験から、同じ思いをしている小・中学生の役に立ちたいとの思いから読みやすさを工夫した。「自殺したら、それまでつらくても耐えて、我慢してきた努力が無駄になる。この本が何かの支えになれたら」と願っている。

150部を印刷。クラウドファンディングの目標金額は80万円。サイン入り自伝、ポストカード、手作りしおりなどを返礼品にする。詳細は前川さんのインスタグラム、フェイスブックで。

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