「丹波焼」でスピーカー 窯元と音響メーカーが共同開発 360度方向に優しい響き

2021.06.26
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「夢工房 陶泉窯」の大上磯松さんと大阪の音響システムメーカーが共同開発した丹波焼のスピーカー=2021年6月20日午後2時29分、兵庫県丹波篠山市今田町下立杭で

兵庫県丹波篠山市今田町の「夢工房 陶泉窯」の窯元、大上磯松さん(66)と音響システムメーカー「ジャトー株式会社」(大阪市北区)が手を組み、陶器製スピーカー「POTTS(ポッツ)」を共同開発した。陶工歴約40年の職人が作り上げた丹波焼の筐体にスピーカーを内蔵。無線通信技術の「Bluetooth」を使って音楽などを聞くことができ、360度方向に優しい音が響く。日本六古窯の一つ、「丹波焼」の伝統と、大阪城ホールなど大規模施設の設備を施工してきた同社の音響技術を融合させた。

高さ約35センチ、上部直径約26センチ。一点物のため、作品ごとに多少大きさが異なる。色は丹波焼ならではのシックな釉薬を施した「あいすみちゃ」「しんじゅいろ」など7種類から選べる。

大上さんは、急須などを作るときに使う手法で、土台となる下部、円筒状の中部、ラッパ状の上部の3つのパーツに分けて作陶した。それぞれのパーツを、泥状の「土部」で接着。800度で素焼きした後、釉薬をかけ、1200度で本焼きをした。高さ約15センチの位置に仕切りを設け、その上にスピーカーユニット(音を出す部分)を取り付けている。

四角い形状や、スピーカーユニットの位置を低くしたものなどさまざまなパターンの試作品を作り、試聴を重ねた。立命館大学・情報理工学部の西浦敬信教授が計測、解析を手掛け、8パターンの最終試作品の中から、最も高音と低音の響きのバランスがよい形を厳選した。

大上さんと同社の小野剛会長が高校時代の先輩、後輩という間柄で、「丹波焼の持つ芸術性と、心地よい音を両立させたスピーカーを作ろう」とタッグが実現。約1年前から試行錯誤してきた。

大上さんは「良い仕上がり。焼き物の曲線がきれいで、音がこもらず全体へ広がっていく感じがする。カフェや洋食店などに置いてもらえれば、雰囲気の演出につながるのでは」と話している。

26日まで、クラウドファンディングサイト「Makuake」で、1台8―10万円で先行販売している。

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