落語家がカレー店 桂歌之助さん田舎に移住 「あくまで副業」

2021.07.09
地域

 

民家の納屋を改装し寄席兼カレー店にするスペースと桂歌之助さん=2021年6月22日午後3時5分、兵庫県丹波篠山市京町で

落語家の桂歌之助さん(50)が、兵庫県丹波篠山市京町の民家を改装し、スパイスカレーの店を早ければ8月に開こうと準備を進めている。市内で落語会を開いたり、農業体験をしたりするうちに10年ほど前から同市への移住を望むようになり、念願の民家を手に入れた。開店する頃に宝塚市の自宅を引き払って、完全移住するという。歌之助さんは「丹波篠山の風景と黒枝豆が大好き。残りの人生、機嫌よく暮らす場所に最適。落語にもプラスになれば」と話している。

昨年、母屋と納屋のある物件(敷地面積約300平方メートル)を購入。母屋を住居に、納屋には高座を置いて落語もできる店にしようと秋から改装を進めた。大学時代は建築学科に在籍。床板張りや塗装など簡単な作業は自分でこなし、物置小屋も土台から自分で作った。

店内にキッチンと、最大で10人ほどが座れる客席を設けた。天井が高く、大きな窓から田園風景が見える。まきストーブも置いた。

営業は1人で「こぢんまりとやりたい」と言う。落語の仕事が入っていない日の月10日ほど店を開く予定。SNS(交流サイト)で事前に営業日を知らせる。副菜には地元の野菜を使うつもりで、ハーブ類はすでに栽培を始めている。落語会は「地元になじんで、興味を持っていただいてから、年2回ほど開きたい」という。

田園風景に溶け込む板張りの店舗(手前)と住居用の建物

店を開こうと考えたのは、テレビ番組「人生の楽園」で取り上げられる田舎で暮らす人は「店をやっている人が多い」と感じたから。スパイスを調合して作るスパイスカレーの店が10年ほど前から大阪で人気を集め、よく食べていた。40歳を過ぎ健康のことを考え始めた頃で、全て天然の素材で作られていることにも魅せられた。

3月末に3日間、ファンを対象に大阪でカレーパーティーを開催し、約60食を提供した。「ポークビンダルとチキンカレー」「エビカレーと麻婆カレー」「白身魚のカレーと豚のキーマカレー」を用意。睡眠2時間、翌朝5時まで仕込みにかかり、「ほんまに大変やったけど、お客さんに喜んでもらえたのがうれしかった」と充実感を得た。

同市への移住は、山口県で行われた落語会で出会った長楽寺(丹波篠山市郡家)の安達瑞樹住職から、自身の寺で開く「ぜんざい寄席」への出演の誘いを受けたのがきっかけ。以来、2007―13に毎年出演していた。

その際に食べた猪肉や、安達住職から送ってもらった黒枝豆が気に入った。また秋に黒枝豆の収穫体験に訪れた際、「秋晴れの中、黒枝豆の畑や、ところどころで上がる野焼きの煙の景色が素晴らしい」と移住を考え始めた。

職業柄、全国を回ることが多く、信州や飛騨も気になっていたが、仕事が多い大阪から通える範囲という条件に当てはまる丹波篠山で7、8年前から物件探しを始めた。京町の物件は、JR篠山口駅からそう遠くなく、黒豆畑、篠山川の桜、山並みが一望できる景色に一目ぼれしたという。

歌之助さんは「カレー屋をやると言うと、落語家引退ですかとよく言われるが、あくまで副業。丹波篠山は大阪から意外と近い。心と体を健康に保ち、落語も頑張りたい」と話している。

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