「医療から離さない」 コロナ対応、地方病院の取り組み 医療の早期介入で入院調整手助け

2021.08.26
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新型コロナウイルスの感染者が急増し、都市部では1度も医療を受けられないまま亡くなる人も出る中、兵庫県丹波地域(丹波市、丹波篠山市)では、丹波保健所が行う入院調整を、兵庫医科大ささやま医療センター(丹波篠山市)が助けている。他地域の保健所は、問診で無症状、軽症などと判断し、入院、宿泊療養などと決めているが、丹波地域では医学的な重症化リスクを考慮した入院調整を行っている。保健所が無症状、軽症と見立てた感染者は、同センターで検査を受ける。感染者を医療から離さない独自の取り組みで、医療の早期介入により重症化を防ぐと共に、短期間での回復につなげている。

「問診しか行わない保健所だけで入院調整、中でも宿泊療養を判断するのは困難」と、医療部分を同病院がサポート。保健所は、濃厚接触者の特定や、入院治療を終えた感染者が自宅に戻りたいと希望したときに、家庭内で感染防止対策が取れるか否かの確認など、まん延防止に力を注ぐ。

中等症2以上の酸素投与が必要な患者は、県内他地域と同じで、保健所と県の「新型コロナウイルス入院コーディネートセンター」(CCC兵庫)で入院調整を行う。

「丹波方式」の入院調整は、丹波地域で判明した第5波感染者の95%以上を占める▽無症状▽軽症▽中等症1(酸素投与なし)―で効果を発揮する。

丹波、丹波篠山両市の開業医で感染が分かると、開業医から保健所に連絡が行く。保健所の問診で、無症状・軽症と判断された感染者は、保健所の指示でささやま医療センターに赴き、採血やCT撮影といった重症化リスクを測る検査を受ける。保健所は、症状やリスクの軽重を調べた医師の所見を参考に入院、宿泊療養などを決定する。

▽肺炎を認める場合(中等症1)は、同病院に入院し、抗ウイルス薬治療▽肺炎を認めないが、重症化リスクがある場合(軽症・無症状)は同病院に入院し、観察と治療▽肺炎を認めず、重症化リスクがない場合は、宿泊療養(宿泊先は、CCC兵庫が探す)―などに調整される。

中等症1までに対応する19床の同病院のコロナ用ベッドはひっ迫しており、▽採血による重症化マーカーが異常な場合は、1泊2日で同病院に入院し、抗体カクテル療法(発症後1週間以内に投与が必要)を行った上で、ホテルで5日程度療養▽CT撮影で肺炎を認め、重症度は中等症1だが症状が軽く、病状が安定している人は、同病院に入院し抗ウイルス剤(レムデシビル)を3日間投与(4日間入院)した後にホテルで3日程度療養―と、重症化リスクを減らす治療を行ってベッドを空け、新患を次々に入院させている。

入院待ちは多い時で20人、24日現在では5人程度だが、2日待てば入院できる。入院待ちの人は全員、同病院で検査済み。重症化リスクが高い人を優先入院させている。

入院調整の流れ

入院待ちや、やむを得ない事情で自宅療養となる患者も、病状が安定している場合は、オンライン診療でフォローし、保健所も健康観察をする。症状が悪化、もしくは悪化が予想される場合は、短期入院などで必要な医療を行っている。

片山覚病院長は、「医療の部分は保健所にできないので、お手伝いしている。保健所から依頼がある軽症、無症状症例の6、7割程度に肺炎が見つかる。検査で無治療の基礎疾患も見つけられ、正確なリスクの把握ができる。その上で早期に医療が介入する。230人ぐらい患者を受け入れてきたが、高濃度酸素の持続投与が必要になったのは3人程度で、重症予防に極めて効果がある」と利点を語る。

芦田定・丹波篠山市医師会長は「検査で医療とつながり、早期治療までできる、ものすごく良いシステム。数が多い軽症者の手当てが、重症者や亡くなる人を減らす上で重要だ。入院待ちの間も病院とつながっているので安心感がある。県立丹波医療センターは、全県の中等症、重症患者を受ける。ささやま医療センターと丹波圏域で役割分担ができ、良いのでは」とコメントした。

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