欧州の今は? ワクチン接種証明で「ピッ」不可欠 出身の西洋美術研究家に聞く

2021.10.04
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隔離生活中の神戸市からオンラインで取材に応じる中川さん。AIによるビデオ電話と、位置情報の確認が2週間続く

イタリア・フィレンツェ在住で、兵庫県丹波市出身の西洋美術史研究家の中川真貴さん。7月末からイタリアに一時帰国し、9月末に日本に戻った。神戸市内で2週間の隔離生活を送る中、フランスも含め現地の「ウィズコロナ」事情をオンラインで聞いた。ロックダウンにより、近くの店に買い物に出かけるのにも証明書が必要となるなどの厳しい行動制限をへて、2回のワクチン接種済み証明の提示でレストランでワインを飲みながら食事ができ、EU間の旅行もできるように制限が緩和された。マスク着用義務は屋内のみ。観光客の受け入れも進んでいる。一方、国民には一定の警戒感、緊張感があり、コロナと付き合いながら経済を回すための試行錯誤が続いているという。

フィレンツェ旧市街地の自宅に戻ったのは規制緩和後。アジア人の姿はないものの、欧米人観光客が戻り始めていた。

現地の保健所で手続きし、持参した日本の厚生労働省が発行するA4サイズのワクチン接種済み証明書を、EU共通の電子証明書(グリーンパス)にした。パスがないと、美術館にもレストランにも入れず、バスや電車にも乗れない。スマホをかざし、「ピッ」とする行為が不可欠な社会になっていた。

イタリアでは、ワクチン接種をしなければ学校にも通えない。事情があり接種ができない人は、検査陰性証明書を代わりに提示していた。

欧州人はマスクが嫌いだったが、30人に5人ぐらいは今も屋外でマスクをしている。大変な時期を経験したからだろう。

2回のワクチン接種済みの割合は、イタリアが68%、フランスが84%。ワクチン接種がスムーズに進んだ理由は、日本のマイナンバーに相当する個人納税者ナンバーがあり、接種対象者やその人の接種回数などが把握しやすかったからだろう。

パリにも行ったが、ルーブル美術館は空いていた。観光施設は人数制限をしているので事前予約が必要だった。パリ市役所が補助金を出してテラス席をたくさん作らせていた。中はガラガラで、テラス席はいっぱい。人々の根強い恐怖心を垣間見た。

フランスの友人は、ロックダウン期間中、3カ月で外出したのは5回と言っていた。精神科にかかった人もいるし、別の病気なのにコロナ患者で病院があふれかえって入院できず、亡くなった人もあった。そこを経験しているので、緩和、解放を喜ぶだけでなく、シビアにも見ている。

欧州の夏はバカンスの季節。今年のバカンス客は、コロナ前の2019年より多かったが、感染が再爆発することはなかった。経済を回しながらコロナとどう付き合うか、模索は続いている。

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