”山の恵み”ありがたく 里山再生へフル活用 多彩なワークショップ

2021.12.04
地域

プロジェクト「八百材舎BASE」の舞台となる山林。スギやヒノキなどが自生している=2021年9月27日午前10時30分、兵庫県丹波篠山市倉本で

兵庫県丹波篠山市の倉本集落にある約5ヘクタールの山林を舞台に、有志による自然を楽しむプロジェクト「八百材舎BASE」が始動した。里山に自生している木々や植物など「山の恵み」を使った草木染めやアロマオイル作りなど、多彩な内容のワークショップを企画。参加者が楽しく自然に触れながら森づくりのノウハウを学べるほか、里山資源を余すことなく活用することで、放棄されていた里山の再生につなげていく。プロジェクトの中心メンバーで、里山資源のコンサル業「ササノワ」代表の内田圭介さん(49)は「森と人の距離を近付けるきっかけになれば」と話している。

プロジェクト始動に向けて新設した本格的な蒸留器

木質エネルギーの利用促進事業などに取り組むNPO法人「バイオマス丹波篠山」(同市垣屋)と連携し、丸太や枝葉を販売する「八百材舎」を立ち上げるなど、同市内で森づくり事業に関わってきた内田さん。市内の活動拠点となる事務所にするため、倉本の家を借りた際、家の裏にある里山も利用できることになった。これを好機と捉え、「地域内外の人たちで、里山と人との関わり方をさまざまな方法で実践できる場にしよう」と、プロジェクトを思いついた。

企画しているワークショップの体験内容は、▽ヒノキなどの樹皮を燃やした蒸留水を使ったオイルやルームスプレー作り▽コバノミツバツツジやコブナグサなどでの草木染め▽ザクロやアンズなどの植樹▽高さ約4メートルの岩石でのロッククライミングと周辺山林の整備活動―など。不定期で開催していく。

草木染めの服やかばんなどの製作販売「けせら工房」(同市福住)代表の松岡茉莉花さん、国産植物を使ったアロマを販売するブランド「かおりと」を手掛ける古山順子さん、クラフトビール製造所「丹波路ブルワリー テラノ・サウス」(同市北)代表の井筒一摩さんら有志で結成した「丹波篠山森の恵みプロジェクト実行委員会」のメンバーがワークショップの講師役などとして関わる。

プロジェクト始動に向けて新設した小屋には、本格的な蒸留器を設置した。「バイオマス丹波篠山」代表の高橋隆治さんが設計。蒸留器の下にある窯で、山の「厄介者」とされている竹を燃やし、燃料とする。冷却水には、井戸水を使い、環境に優しい仕組みにした。

プロジェクトメンバーの友人らがこのほど、倉本集落に集まり、内田さんから里山の現状について話を聞いたり、蒸留を体験したりした。蒸留体験では、ヒノキのウッドチップ約20キロを蒸留器の中に入れ、山林内の放置竹林から切り出した竹を燃やし、100度近くまで温めた。抽出した蒸留水をアロマ作りと、オリジナルビールの香り付けに利用。山の資源を循環させて、新たな資源を生み出していた。

内田さんは、「かつて、まきとして使われていたヒノキも、今では使われることが少なくなった。高齢化などもあり、里山に人の手が入らなくなったことで森はジャングル化した。地面に光が届かなくなり、シカやイノシシの餌が育たなくなった結果、餌を求める動物が獣害をもたらしている」と語る。倉本集落では特に、サルによる被害が多発しているという。

「ワークショップに参加した人たちが、イベントがなくても自主的に森づくりに関わってくれるようになるのが理想。里山の課題解決にみんなで取り組んでいきたい。地域の環境保全やSDGs(持続可能な開発目標)にも貢献できれば」と話している。

次回は4日午前10時―午後3時、ヒノキを使った蒸留と、クロモジの苗の植樹を行う。参加費5700円(材料費込み)。

木がビールに?「クロモジ」麦酒開発

クロモジの木を蒸留して出来た芳香液を使ったオリジナルビール「黒文字麦酒」=2021年11月15日午前10時1分、兵庫県丹波篠山市北で

「八百材舎BASE」の運営を担う「丹波篠山森の恵みプロジェクト実行委員会」が、クロモジの木を蒸留して出来た芳香液を使ったオリジナルビール「黒文字麦酒(クロモジペールエール)」を開発した。丹波篠山市内の里山に自生する植物を生かした商品を開発、販売する「丹波篠山森の恵みシリーズ」の第1弾。

売り上げの一部は、「丹波篠山・森の恵み基金」として、倉本集落内の森林環境の整備費用に充てる。

クラフトビール製造所「丹波路ブルワリー テラノ・サウス」(同市北)で醸造。同製造所代表の井筒一摩さんが、クロモジ特有の爽やかな風味と甘さを生かし、薬膳酒のような、飲みごたえのある味わいに仕上げた。芳香液は、同プロジェクトで使われている蒸留器で抽出した。

1本660円(税込み、330ミリリットル)。同製造所の通販サイトなどで購入できる。

第2弾として既に、クロモジとヒノキの蒸留水を使った芳香水を開発。第3弾以降のラインアップには、草木染めの風呂敷や手ぬぐいなどを考えている。

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