父の庭園を映画に 昭和を代表する作庭家 重森三玲氏の四男が監督

2021.12.13
地域

父である重森三玲が手掛けた庭園を紹介する、記録映画を制作している映画作家の貝崙さん=2021年11月24日午後2時23分、兵庫県丹波篠山市川原の住吉神社で

昭和を代表する作庭家、重森三玲氏(1896―1975年)が手掛けた兵庫県丹波地域内の3カ所の寺社でこのほど、その庭園を紹介する記録映画の撮影が行われた。三玲の四男で、文化記録映画作家の貝崙(ばいろん)さん(83)=東京都=が監督を務める。貝崙さんは「三玲のことは、庭園に興味のある人こそ知っているが、まだまだ知名度が低い。『永遠のモダン(現代的)』という信念を掲げ、作庭に取り組んできた三玲について、もっと多くの人に知ってもらえる作品にしたい」と力を込める。来年5月に公開予定。

題名は、「石と砂と苔―庭園に禅とモダンを描いた男」。三玲の生み出した芸術作品である全国各地の庭園をナレーションと共に紹介し、作庭技法などに迫る内容。多くの観光客が訪れる東福寺(京都府)の方丈庭園などをはじめ、これまであまりメディアで取り上げられてこなかった寺社や、個人宅の庭にもスポットライトを当てる。

丹波地域では、4色の砂が鮮やかな「四神相応の庭」(石像寺、丹波市市島町中竹田)、石組が際立つ池泉式庭園「竜珠の庭」(正覚寺、丹波篠山市般若寺)、海景や波打つ景観をテーマにした「住之江の庭」(住吉神社、丹波篠山市川原)を撮影した。

白く太い曲線は荒波を、白砂の砂紋は小波を表現しているとされる住之江の庭を訪れた貝崙さんは「普通では考えられないデザイン。いわば前衛アート」と舌を巻いていた。

同庭の大規模修復作業に関わった地元住民らも現地に駆け付けた。地元住民で当番を決め、枯山水の波紋をつくったり、落ち葉を拾ったりして維持管理に努めている。

個人宅や小さな寺社に造られた庭は、維持管理が難しいこともあり、消失の危機に瀕している。貝崙さんは「ありがたい」と、住之江の庭を管理する地元住民に頭を下げ、感謝していた。

貝崙さんによると、庭園文化が根付く中国で来年、三玲の展覧会が開催されるなど、「日本庭園ブーム」が起こっているという。「コロナ禍の状況改善後、海外観光客へアピールする素材にもなれば」と期待している。

上映時間は75分ほどを見込む。年内に撮影を終え、3月までに完成。東京、京都、岡山などで公開する。フィルムの貸し出し、販売も行う予定。

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