五輪選手のスーツ製造 微調整300回、 要望に合わせミリ単位で   コロナ禍で帯同はできず

2022.02.07
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北京冬季五輪日本代表のスピードスケートスーツの縫製を担当した山本さん(右)と、設計担当の渡邊さん=兵庫県丹波市氷上町横田で

4日に開幕した北京冬季五輪に出場する選手らのレース用スーツを、ミズノテクニクス氷上工場(兵庫県丹波市氷上町横田、川北篤工場長)が製造している。スピードスケート、ショートトラック、スキージャンプ、クロスカントリースキー、ノルディック複合の5種目で、日本代表全選手のスーツを担当。複数メダルの期待がかかる日本選手団主将の高木美帆選手をはじめ、一部海外選手を含む世界トップアスリートの冬の戦いを技術で支える。

ミズノテクニクスは、スポーツ総合メーカー、ミズノ(本社・大阪市)のグループ会社。氷上工場はアパレル関連の製造部門で、冬季競技ウエアのほか、別注品などを受注。設計はミズノ社で行うが、採寸、生地の裁断、縫製は一貫して氷上工場で行っている。

同工場で冬季競技向け縫製部門(6人)のチームリーダーを務めるのが山本紘恵さん(39)。2010年からスケートスーツを担当し、専門技術を磨いてきた。設計を担当するミズノ社の渡邊諭さんとも綿密に打ち合わせながら、選手一人ひとりの要望に合ったスーツをミリ単位の細やかな調整で仕上げている。

ミズノ社コーポレートコミュニケーション室の堀井洋輔さんによると、スピードスケートスーツは、空気抵抗を最大限減らすことが求められるため、北京用モデルに対しては、微調整を含め約300回、大学の研究室などで、風の流れを再現する風洞実験を行ったという。「最高速度は60―70キロにもなるので、服といっても“ギア”(道具や装置)と同じ」と堀井さん。

山本さんは、ソチ、平昌の両五輪では、ミシンと生地持参で現地入りし、チームに帯同して直前までスーツの調整を行った。しかし、今回はコロナ禍で五輪会場に行くことはできなかったため、1月20―29日に行われた長野合宿で、最後の調整に当たったという。

前回の平昌五輪では、日本選手が獲得した13個のメダルのうち、9個のメダルに同工場製のウエアが関係しており、「自分のことのようにうれしかった」と山本さん。「今回も頑張ってほしいと期待する反面、何事もありませんようにと、ドキドキしながらテレビで観戦することになると思う」とほほ笑んだ。

川北工場長は「北京五輪に向けてやれることはやってきた。選手のみなさんには、力いっぱい頑張ってほしい。丹波のみなさんには、近くにこんな会社があると知ってもらえたらうれしい」と話していた。

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