防災へ立ち上がった”ムラ” 避難時機を地域で判断 ため池の「不安」に備える

2022.03.12
地域

丹波市防災会議で芝町自治会地区防災計画を説明する山本会長(右)と高見さん=2022年2月17日午後2時35分、兵庫県丹波市氷上町成松で

自分たちの地域は自分たちで守る―。地域内にあるため池の決壊や、川の氾濫による人的被害を防ごうと、兵庫県丹波市の春日町芝町自治会(山本雅春会長)が、住民の避難基準などを独自に定めた「地区防災計画」を策定した。災害の警戒レベルに応じ、ため池や川の監視体制を取り、避難すべき対象者や要件を示した避難の種類を明確化。避難時機を自治会で判断し、1人の犠牲者も出さないよう有事に備える。任期満了による自治会役員の交代を見越し、誰が役員になっても自治会の防災力が発揮できる基準や枠組みを規定した。

同自治会内には、山裾にため池が2つあり、うち1つは、決壊した場合に居住者の避難が困難になる恐れがある特定農業用ため池「丸古池」。さらには、雨量によっては氾濫の可能性がある黒井川が流れているという地理的背景がある。

同県のシミュレーションなどによると、ため池の決壊による浸水想定区域内に43戸が、黒井川の氾濫により52戸が床上浸水するとされている。

計画では、豪雨時にため池や川の水位を確認し、危険を察知する担当者を規定。無料通信アプリ「ライン」や電話を活用し、災害情報を共有する仕組みも整える。これにより、避難指示を住民に通知する。

また、防災段階を「準備(警戒レベル1、2)・警戒(同3)・監視(同4)・避難(同5)・復旧」と規定。水位警戒の実施や、防災本部や避難所の開設など、段階に応じた取るべき行動を示した。

避難は6種類に区分し、対象者と発動要件を示した。高齢者や要援護者はレベル3で事前避難を、土砂災害警戒区域に隣接する世帯はレベル4で垂直・水平避難するなどとした。

これまでなかった、有事の防災組織を設置し、その担当業務を見える化した。自治会長を本部長とする自主防災組織を立ち上げ、避難所への誘導や運営、炊き出しなど、役員や隣保ごとに役割を明らかにした。

一昨年、2つのため池を抱える同自治会3組(高見裕二組長)が防災マニュアルを策定。これを自治会全体に発展させる形で同計画を練った。

山本会長は「他の自治会が防災計画を策定するきっかけになれば」と期待。高見さんは、「市内には同じようなため池が多くあり、他の自治会にも危険性を認識してほしい。各自治会で防災計画ができれば、市の防災力は格段に上がるはず。市は防災計画作成に対する補助金制度を検討してほしい」と話している。

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