句会世話人 大野昶さん(丹波市山南町上滝)

2022.04.03
たんばのひと

大野昶さん

和とじで手作り句集

月に60句ほど俳句を作る。2020、21年は、年に1冊、筆書きの手作り和とじ句集にまとめた。タイトルは「車庫にて」。「二両電車」、「各驛停車」、「終電車」と、10年、5年ごとの節目に句集を作っていたが、「もう出版はしません。“車庫”に入っているので」と茶目っ気たっぷり。

退職後、「何か頭の体操になることを」と考えていたところ、地元上久下地区の句会に誘われ、入会。ホトトギス派の伝統俳句の作り方を教わった。

老人福祉施設「山南古代の里」で、入所者と職員を対象にした句会を始めて9年目になる。入所した友人から世話役を頼まれたのがきっかけ。毎月、作品を集めて一覧を配って互選してもらい、パソコンで整えた通信は96号になった。今は亡き会員の句を会のモットーにし、毎号通信に載せている。「俳句とは人の心に花咲かす」

集落でも7年前に俳句同好会「上滝俳句詠もう会」を立ち上げ、6人の仲間で続けている。昨年、会で合同句集を手作りした。加えて、一人ずつの作品を抜き出し、和紙に筆書き、和とじ本にしてプレゼントしたところ、とても喜ばれたという。「厳しいことを言って嫌われたかもしれないが、今までやってきてよかったという思いになった」

2月に死去した、俳誌「ホトトギス」名誉主宰の稲畑汀子さんのエピソードに触れ、改めて「俳句を堅苦しくしないこと」が大切だと感じたという。「俳句の面白さを伝えたいと、これまで自分の考えを押し付け過ぎていたかも」。句会を続ける中での挫折感と、うれしさを詠んだ2句。「突つかれて転びし蜷の道途切る」、「人生の今こそ佳境山笑ふ」。86歳。

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