就職先は畑 コロナで農業に出合う 大卒22歳の宮垣さん

2022.04.04
地域

トラクターに乗る宮垣仁さん。畑を耕し、肥料をまきつつ、27アールの畑の周りに、シカ、イノシシよけの柵を設置するところから1年目の農業を始めている=2022年3月30日午後5時50分、兵庫県丹波市氷上町で

兵庫県丹波市内の多くの事業所で入社式が行われ、新社会人が新生活をスタートさせた4月1日。3月末で同志社大学(京都市)を卒業した宮垣仁さん(22)=同市氷上町=は、自宅近くの畑にいた。職場は、畑。将来の職業を模索していた在学中に見舞われた、新型コロナウイルス禍で、農業と出合い、未経験ながら新規就農。未知の世界への挑戦を始めた。

新型コロナの感染拡大で、3回生から全講義がオンラインになり、帰郷。両親が親戚を泊めるために所有している同市青垣町の古民家に1人通った。そこに猫の額ほどの荒れた畑があった。何か育ててみるかと軽い気持ちで耕すうちに、「畑だったらできるんじゃないか」の思いが芽生えた。元アマチュアボクシング選手で、高校は神戸、大学は京都で過ごしたが、都会暮らしは性に合わなかった。定時で働く仕事も不向きと、会社勤めも全く頭になかった。かといって働かずに暮らせないと考える中で、初めて、できそう、やりたいと思うことに出合った。

古民家の目の前にあるイチゴのハウス栽培を手掛けることぶき農園の足立竜真さん(25)が土いじり中に声を掛けてくれ、農業への思いが膨らんだ。野菜に興味があるならと、竜真さんから野菜を中心に100種類ほどを少量多品目栽培する、くまゆき農園(同町)の足立浩一さん(45)を紹介してもらい、相談に乗ってもらった。

並行して、親に内緒で4回生で丹波市丹波栗振興会に入会。3日後にあった総会で出会った生産者の近藤貞雄さん(69)=同市春日町=に「一緒にやってみるか」と声を掛けてもらい、秋の収穫、出荷、冬のせん定、200本の新植を手伝わせてもらった。新植は、「好きなものを植えて良い」と言われ、丹波市では栽培が少ない品種「利平」などを植えた。

自宅がある鴨内でも、地元の農業委員、芦田義彦さん(60)の紹介で、農地を27アール借りることができた。芦田さんからトラクターを借り、何かとアドバイスをもらっている。

就農1年目の今年は、大名草でサツマイモを12アール、鴨内で、丹波黒大豆の枝豆、白ネギ、トウモロコシ、オクラを栽培。野菜は種から育苗する。新植分と合わせ600本ある近藤さんの栗園に通い、丹波栗栽培の研修もする。
知識も経験もなく、無料動画共有サイト「ユーチューブ」で農業動画を見て、先輩に「これで間違ってませんか」と尋ね、「農業ノート」をつけ、勉強している。

「皆さんが縁をつなげて下さって、就農できた。『自分なり』はやめ、先輩のやり方をまね、経験を積む。5年ぐらいは人のやり方を学ぶのに徹する」と話す。

2月末まで、大学の期末レポートを書きながら、ぼかしを作ったり、トラクターに乗る練習をしたり、準備を続けた。

「先輩からは、新人で農業を全く知らんやつがそんなにたくさんできるんか、黒枝豆の15アールだけでもまともに作れたらほめてやる、と言われている。都会暮らしも会社員もできない自分は、自然相手に挑戦します」と笑顔で話した。

関連記事