赤井家ゆかりの伊賀で個展 「江戸切子」学ぶガラス作家 繊細な酒器など展示

2022.06.21
地域

グラスに繊細な模様を施す石田さん=兵庫県丹波市市島町下竹田で

兵庫県丹波市市島町下竹田に工房「shin glass」を構えるガラス作家、石田慎さん(36)の個展が23日―7月2日、黒井城主・赤井家ゆかりの「武家屋敷 赤井家住宅」(三重県伊賀市上野忍町)で開かれる。酒器を中心に、大皿や鉢など、切子ガラス約150点を展示する。伝統工芸「江戸切子」の技法を学び、生地づくりも手掛ける珍しい作家で、唯一無二の繊細で美しい作品を生み出している。

石田さんは大阪市出身。中学生の時、父親が買って来てくれた瑠璃色の切子グラスを手にしたのが、江戸切子との出合いだった。20歳で上京し、2年間、江戸切子の職人に弟子入り。その後、吹きガラスの技術も身に付けながら機材をそろえ、2015年に丹波市で独立した。

江戸切子は、ガラス生地の製造と、模様のカットが分業になっているが、石田さんは両方を1人で行う。ガラスを約1300度で溶かし、型を使わない「宙吹き」で形を作り、1点ものの生地を製作。約500度でゆっくり冷やしてガラスの動きを止めた後、ダイヤモンド砥石を取り付けたカット機で模様を施していく。最後に研磨し、美しい艶を出して仕上げる。

繊細なカットを施した酒器

色ガラスを重ねて溶着する「多重被せ」や、金や銀の箔を貼ったり、窯変させたりと、さまざまな技法を組み合わせている石田さん。「教えてくれる人がいないので、いろいろな実験をしている」とほほ笑む。

2016年に増上寺「天祭一〇八」で「M碗グランプリ」の1位を受賞したのをはじめ、18年には大阪工芸展で美術工芸大賞を受賞するなど、評価を受けている。

赤井家住宅での個展は、伊賀市文化都市協会が伊賀市にガラス文化を広めたいと企画しているシリーズの一環。丹波市と伊賀市は、赤井(荻野)直正の嫡男、直義が京都に落ちのびた後、伊勢津藩主・藤堂高虎に仕え、足軽大将として活躍したという縁がある。赤井家住宅は、長屋門、土蔵、茶室、庭園などがあり、直義の子孫の寄贈を受けて伊賀市が市民交流スペースとして活用。国の登録有形文化財に指定されている。

大皿「星」

黒井城跡には何度も登っている石田さん。「伊賀は丹波とつながりのある地なので、歴史が好きな人に見に来てもらえれば」と言い、「今後は丹波でも展示会ができれば」と話している。

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