「みんなの居場所に」 空き家を宿泊可の交流施設に 大阪在住の個性派10人が改修

2022.07.17
地域

築約140年の空き家を「何でもできる」交流施設にすべく、汗を流している藤岡さん(左)と横田さん=兵庫県丹波篠山市貝田で

兵庫県丹波篠山市貝田の築約140年の空き家を、大阪府内在住の約10人が改修している。作曲家、スタイリスト、プロボクサー、うどん店主、写真家など個性派メンバーが携わっている。宿泊や農業体験、メンバーの特技を生かしたイベントなどができる交流施設にする予定。代表の藤岡徹さん(31)は「みんなの居場所にしたい」と、構想を膨らませている。

学習塾を経営する藤岡さんと、作曲家の横田晃希さん(30)、丹波篠山市出身の男性(31)の同い年の3人が中心。3人は大学生時代、スタイリストの今井まりさん(58)が営む大阪・中崎町のカフェでのアルバイト仲間。今井さんや、カフェの店員の主婦、今井さんの友人らもメンバーとして携わっている。

改修中の空き家は、木造2階建て(一部平屋)で、延べ床面積約150平方㍍。そばにある耕作放棄地の畑(0・5反)も借りた。年内に開業する予定で、藤岡さんと横田さんを代表とする法人「coco sasayama」を近く立ち上げる。

簡易宿泊施設にする。宿泊客には、畑で農業体験や、庭でバーベキューなどを楽しんでもらえるようにする。藤岡さんは「祖父母の家のような感覚で、田舎の空気感に浸ってほしい」と頬を緩ませる。

また、24時間365日、メンバーの誰かしらが施設に常駐し、いつ誰が来ても対応できる体制を取る。

ボクシングミニマム級で世界主要4団体元王者のプロボクサー・高山勝成さんによる練習合宿や、横田さんの音楽教室、プロカメラマンによる写真教室なども計画。地元の茶道講師らとコラボした体験企画も考えている。

3年前、同い年3人で、丹波篠山市出身の男性の実家を訪れた。きれいな田んぼに、整備が行き届いた道路、ホタルが見られる川の夜景―。都市部で生まれ育った藤岡さんと横田さんは、田舎の日常的な風景に感動した。

しかし、地元住民からは、その美しい景観の裏側にある担い手不足という現状を聞いた。「こんなにきれいな景色をなくしてはいけない。みんなに知ってほしい」と、都市住民に田舎の良さを感じてもらい、地元住民もさまざまな体験ができる交流施設をつくろうと決意した。

開業に向け、男性の実家がある集落内で約10反の農地を借り、米や黒豆などの野菜を栽培。週1回のペースで、田舎暮らしを“修業”。話を聞き、興味を抱いた今井さんのカフェの店員や、友人らも次第に足を運ぶようになり、3人の計画にメンバーとして参加するようになった。

今年3月、空き家サイトに登録されていた、貝田の空き家を借りられることになった。以降、各メンバーが来られるときに足を運び、壁に漆喰を塗ったり、床を張ったりするなどし、改修している。集落で行う草刈りにも参加している。藤岡さんは「村の方がすごくウェルカムで、何かあれば『こんなん使うか?』と声を掛けてくれる。すごくありがたい」と感謝。「誰もが行きたいときに行けて、何でもできる施設に」と夢を描いている。

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