「初心者集団」が15年ぶり夏1勝 公式戦ほぼコールドもついに 校歌聞き「ああ高校野球だな」

2022.07.14
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兵庫大会で15年ぶりに勝利を挙げ、初めて校歌を聞く氷上西高の選手たち。全員が公式戦初勝利=兵庫県豊岡市で

兵庫県豊岡市のこうのとりスタジアムで9日に行われた全国高校野球選手権兵庫大会1回戦で、同県丹波市にある氷上西が多可・吉川合同チームに1―0で競り勝ち、2007年以来、15年ぶりの夏1勝を挙げた。「日本一前向きな野球部―初心者集団の下克上大作戦」のキャッチフレーズを掲げて2年。ひたむきに白球を追った選手たちは「めちゃめちゃうれしい」と喜びを爆発させた。

両チームのエースが好投し、互いに凡打を重ねた。氷上西の藤田喜継監督は、常に「打て」のサイン。ランナーが塁に出ても、練習通り、全員にフルスイングをさせた。

氷上西は6回裏、二死から1番の芦田哉太君(3年)がレフト前ヒットで出塁。2番の俵龍星主将(同)が右中間三塁打を放ち、虎の子の1点を奪った。芦田君を俵君が返すのが数少ない得点パターン。「2人で点を取ろう」と試合前に誓っていた。

「打たせて取る」と、気負わず臨んだエース右腕の足立鈴林君(2年)は、先頭打者を1度しか塁に出さなかった。7回表の二死3塁の場面は「この日一番のボール」(足立君)で、相手主軸を三振に取り、9回を無四球6奪三振、2安打で完封した。

守備では二塁手の芦田君、三塁手の大槻柊太君(2年)が内野ゴロの山をうまくさばき、一塁手の壇舞楽君(同)も堅守で応えた。

俵主将は、「ほっとしている。1年生の時からの目標が達成でき、すごくうれしい。初めて、グラウンドで勝利の校歌を聞き、『ああ、高校野球だなあ』と思った」と、大きな1勝を振り返った。

6回裏、待望の先制のホームを踏む芦田君

各学年40人定員の小規模校で、毎年、部員集めに悩まされてきた。9人そろわず出場を辞退したり、他のスポーツ同好会から集めた助っ人にユニフォームを着せて出場した年もあった。08年以降、コールド負けを喫しなかったのは09年のみ。11年には、姫路工業に県大会最多失点記録となる0―71(5回コールド)を喫したこともあった。

今の3年生の初の公式戦は、20年秋季県地区大会の柏原戦。0―51で大敗。以降、公式戦は今春まで6試合全敗で、全てコールド負けだが、練習試合では勝ちを経験。着実に地力をつけてきた。

今年は1年の松井誠虎遊撃手が入部したことで、内野手全員を野球経験者でそろえることができ、守備が安定。左翼の村上太陽君(3年)、中堅の杉上唯斗君(同)、右翼の畑田晴希君(2年)の外野手3人は高校から野球を始めた初心者ながら、めきめき上達。この日の試合でもそつのないプレーをした。

氷上西は13日、13-1のコールドで三田学園に敗れた。

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