草刈りで「フェス」 休耕田の棚田で初開催 丁寧さや速さ競う

2022.07.29
地域

 

初開催となった「草刈りフェス」。草刈り機の使い方を覚えた都市住民が夢中に刈り進めていた=兵庫県丹波篠山市波賀野新田で

丹波篠山市立古市小学校そばの休耕田の棚田で24日、「草刈りフェス」と題した初のイベントがあった。丹波篠山市内、播磨地域で、草刈りを通じた関係人口の増加を目指す「畦師」活動を展開している有志で実行委員会を立ち上げ、企画した。農家の重労働というイメージが強い草刈りの裏側にある楽しさを、参加した都市住民に知ってもらい、景観美化につなげるのが狙い。今後、両地域で不定期に催していく。

同市内では、丹波篠山吉良農園代表の吉良佳晃さんが中心となり、農家の高齢化や担い手不足によって休耕田ができ、草刈りが行き届かずに景観を損なっている問題を解決しようと、2年前から「丹波畦師プロジェクト」を進めている。運転免許のような形で「丹波畦師」を認定し、収益化により持続性のある組織にすることなどを目指している。両地域の畦師たちが意見交換する中で、レジャーに近い形で草刈りに親しんでもらう「フェス」を思いついた。

草刈り前の休耕田

初のフェスには、岐阜、神戸、宝塚などから約40人が参加。女性や大学生も多かった。大半が都市住民で、草刈り機の扱いは未経験。6人ずつ計5チームを結成した。競技前には、チームごとに畦師が講習。エンジンの基本操作や、スムーズに刈り進めるこつなどを伝えていた。

吉良さんが管理している約1反の休耕田で、「手(鎌)刈り」「草刈り機」の2部門で、▽丁寧さ▽美しさ▽速さ▽チームワーク▽虫への優しさ―の5項目の技術を競い、畦師の2人が審査した。ゴーグルを装着したり、初心者が扱う際には畦師がそばに付いたりし、安全面への配慮を徹底した。

草刈り後の休耕田。ものの3時間できれいに

ピンク色のテープで区分けされたエリアで、両部門ともに所要時間20分間で草刈りを行った。同じチームのメンバーが草刈りをする際には拍手をしたり、「良いね」と声を掛け合って応援したりして盛り上がった。

優勝チームには、草刈り機のチップソーをトロフィーに見立てて贈呈。今後、大会ごとに優勝チーム名を書いたペナントリボンを付けていくという。

使い方を覚えた参加者たちは、競技後にも夢中になって草刈り機を操作し、草が繁茂していた休耕地はすっきり。午前中の約3時間で200キロ近くの草が集まった。刈った草はコンポストに入れて堆肥化し、この休耕地での農作物栽培に生かす。吉良さんは「古市小学校の児童や古市幼稚園の園児が一年中、農業を体験できるフィールドにしたい」と話す。

参加した市内の男性(54)は「田舎で毎週のようにしている草刈りを通じて、交流につながる。良い取り組み」と話した。若松さんに誘われ参加した大阪市の男性(54)は「最初は怖かったが徐々に慣れ、使い方を覚えられた。自然に触れる機会にもなり、気持ち良かった」とにっこり。

兵庫県立大学環境人間学部1年の学生(18)=神戸市=は「草刈りは黙々とする作業という印象があったけれど、みんなで和気あいあいとできた。農家など、大学では出会えない人に出会え、いろんな話も聞ける。楽しかったし、印象が変わった」と充実感をにじませた。

同フェス実行委員長の渞規士さん(42)=明石市=は「丹波篠山、播磨で交互にフェスをやっていきたい。第2回を秋ぐらいにできれば。地元の飲食店の方にも出店してもらったりしながら、草刈り人口の増加につなげたい」と展望を描いた。

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