住民3人の訴え却下 ホテル開発許可差し止め訴訟 景観利益で「原告適格」の画期的判決も 地裁「相当程度配慮」

2022.08.28
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建設予定のホテルのイメージ図

兵庫県丹波篠山市の城下町内で予定されているホテル「ルートイン」の建設計画を巡り、同市の元副市長、金野幸雄さんら周辺住民3人が景観や生活環境の侵害、手続きの問題を理由に、市の開発許可の差し止めを求めた訴訟で、神戸地裁(高松宏之裁判長)は23日、原告の訴えを却下した。景観保全などを理由に周辺住民が裁判を起こす権利があることを認める画期的な判決となった一方、計画中のホテルは「景観に相当程度配慮している」とし、現状では「重大な損害が生じる恐れがあるとまでは認められない」とした。ルートイン社は今後、許可申請を提出するなど、開発に向けた手続きを進める見込み。

金野さんらは、ホテル建設で景観の利益が侵害されると主張したほか、市の条例や手続き上の問題を理由に、「例外的に開発を認めることは市長の裁量権の逸脱、濫用に当たる」として提訴。また、市民のまちづくりへの参画を害しているとし、「まちづくり権の侵害」ともした。

建設が予定されている土地

また、原告のうち予定地に最も近接する場所で暮らす1人は、日照権やプライバシーの問題など、生活環境が侵害されることを訴えて、後に原告に加わった。

判決では、建設予定の施設は、「周囲の景観に相当程度配慮したものとなっている」としたほか、周辺地域の自治会長の多くが計画に賛成していることから、「大方の意見は計画に賛成するものであると認められる」と指摘。加えて、用地の現状は駐車場のため、既存の建物を壊すものではないことを考慮し、「計画で景観上の重大な損害が生じる恐れがあるとまでは認められない」とした。

生活環境の侵害についても、▽日照時間の減少が長時間に及ぶとは認められない▽目隠しフェンスによって視線はさえぎられる―などとして認めなかった。

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