ウクライナ避難民も楽しく ”ムラとマチ”で稲刈り 「日本の田舎の良さ知って」

2022.09.29
地域

稲刈りに精を出すウクライナからの参加者たち=2022年9月24日午前11時1分、兵庫県丹波市市島町北奥で

兵庫県丹波市市島町北奥の山本眞司さん(65)の田んぼでこのほど、都市部などからの家族連れや、ロシア軍侵攻によるウクライナからの避難民5人ら計約40人が、鎌による稲刈りを楽しんだ。

同集落の有機農家、岸下正純さん(71)と、「丹波いちじまふぁーむ&奥丹波の森」を運営する荻野拓司さん(69)が共同代表を務める「ムラとマチの奥丹波(ムラマチ)」(18人)の主催。農業を通じて田舎の良さを体感してもらい、移住者や交流人口を増やすことが目的で、3年目の取り組み。

ウクライナの人たちの参加は初。以前からムラマチが、形が悪いなどの規格外の野菜を、日本に避難してきたウクライナ人の支援活動を行っているNPO法人「CODE海外災害援助市民センター」(兵庫県神戸市)を通じて、避難民に分配していることなどが縁となった。

今年5月に2日間かけてコシヒカリの苗を手植えした約10アールの田んぼで作業。稲刈りの手際の良さが際立っていたウクライナ人のビタ・コザチェンコさん(35)は、今年4月にウクライナ西部のジトーミルから夫を残し、6歳の娘を連れて避難してきた。「手際が良いのは、フィンランドで小麦やジャガイモなどの農業に従事していた時期があるので」と笑った。

侵攻初期には近くにミサイル攻撃があったことや、いつロシア兵がやって来るか分からない恐怖からクローゼットに隠れて就寝していたこと、夫がエンジニアで国の産業を支えるため、ウクライナに残って働いていることなど、母国の状況を語る際には表情を曇らせ、「戦争が早く終わって、夫に会える日が来ることを願っています」とぎこちなくほほ笑んでみせた。

参加者たちは、爽やかな秋風に吹かれながら「ザクッザクッ」と小気味の良い音を立てながら稲を刈り取り、稲木に掛けた。子どもたちは時折飛び出してくるカマキリやカエルに大はしゃぎ。日本人とウクライナ人の子どもたちはすぐに打ち解け、捕まえた虫を見せ合っていた。

昨年に続いて家族4人で宝塚市から参加した女の子(7)は、「虫もカエルも平気」と胸を張り、「ごはんが大好き。私が田植えと稲刈りをしたお米はどんな味がするのか楽しみ」とほほ笑んだ。

山本さんは、「ウクライナの方々にも、この時だけでも楽しいひとときを過ごしてもらえたのでは。今後もこの活動を通じて、都会の人だけでなく、外国人にも日本の田舎の良さを知ってもらい、村の活性化につなげていきたい」と話していた。

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