里に響く機織りの音 受け継がれる「丹波木綿」

2022.09.16
たんばの世間遺産地域

 

機織り機で丹波木綿を織る佐野由美子さん=兵庫県丹波篠山市栗柄で

当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は丹波篠山市栗柄地区で受け継がれてきた「丹波木綿」と、機織りの拠点となっている「創作館」です。

江戸時代から伝わる丹波木綿。「用」と「美」を兼ね備えた味わいのある生活用品として受け継がれてきた。農家高齢者施設「創作館」で丹波木綿保存会の会員14人が創作活動を続け、機織りの音が栗柄の里に響く。

丹波木綿づくりの拠点となっている「創作館」

丹波木綿は仕事着として、農作業の合間に織られていた。明治以降は機械化による大量生産が主流となり、手織り木綿は家庭では織られていたが、産業としては衰退していった。戦後は家庭で木綿を手織りすることも少なくなり、1973年頃に機織り機を持ち寄って、8人で生産を再開。76年には創作館が建てられ、機織り機を集約した。

綿花栽培から手掛けており、種取り、糸紡ぎ、草木染め、整経、もじり通し、機織りなどの工程を経て作品を仕上げる。会員で、母親も創作館に通っていた佐野由美子さん(80)=栗柄=は、「丹波木綿は、夏は涼しく、冬は温かい。草木染めの優しい色合いは、どの色とも合う」と特長を話し、「どの工程も楽しい。やめられない」とその魅力を話す。

同会が織る丹波木綿は1996年に「兵庫県伝統的工芸品」に選ばれた。およそ1年半ごとに鳳凰会館(丹波篠山市河原町)と創作館で交互に展示会を開催。糸紡ぎ、染め、織り(コースター作り)の体験ができる。

創作館(079・593・0922、水・日曜・祝日は休館)。

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