寺の建立より古いご本尊 もみじめぐりに合わせ公開

2022.10.24
たんばの世間遺産地域

当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は丹波市柏原町新井地区大新屋の「十一面観世音菩薩立像」です。


850年前の作とされる「十一面観世音菩薩立像」(三寳寺提供)

室町時代の文明4年(1472)に創建された三寳寺の本尊、十一面観世音菩薩立像。像高109・2センチ、一木造の黒漆塗りで、衣服の裾の形状などが白鳳・奈良の様式を残しているとし、850年以上前の平安時代後期の作という。明智光秀の丹波攻めの兵火や江戸初期の失火など、2度の災難をかいくぐって檀家たちを見守り続けている。現在、文化財指定に向け、審議が進んでいる。

三寳寺の建立より300年も古い仏像が、なぜ同寺で祭られているのか―。丹波古文書倶楽部の代表で、同寺の総代でもある岸孝明さん(74)の見立てでは、その昔、三寳寺の周囲にあった複数の寺か、当時すでに現存していた新井神社かで祭られていたのでは、という。また、平安時代に観音信仰が流行したので近くにあった観音堂から迎え入れられた、さらには、応仁の乱の最中に三寳寺が創建されていることから、戦乱で荒れ果てた京都の寺から持ち込まれた、という説を挙げた。

創建550年の節目を迎えた三寳寺。11月1日から始まる「丹波もみじめぐり」の会場にもなっている

50年に1度、開帳する秘仏でもある。今年は三寳寺の創建550年の節目にあたり、同寺はもみじの名所でもあるため、11月1―30日の期間、丹波市観光協会が実施する「丹波もみじめぐり」に併せて御開帳を行う。

岸さんは、「もみじの美しさと共に、寺が守り続けてきた地域の宝の存在を知ってもらえたら」と話している。

 

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