「元気もらった」お礼 農作業の雄姿を写真集に サプライズプレゼントで深まる高齢者4人の絆

2022.11.10
地域

農業に励む中森さん、岡本さん、足立さんと、3人の姿を収めた写真集を作った廣岡さん(左から)=兵庫県丹波市氷上町西中で

気の合う仲間と農業に励む兵庫県丹波市氷上町中央地区の高齢者3人が、地域の休耕田などで和気あいあいと作物を栽培し、朝から暗くなるまで作業に精を出している。そんな3人の姿に「勇気と元気をもらった」という近くの男性が、農作業の様子を写真に撮りため、感謝を込めた写真集を製作。粋なサプライズプレゼントで喜ばせた。3人は「こんなことをしてくれる人がいるなんて」と感激。これまであいさつ程度の関係だった男性と、農業を通じて絆を深めている。

◆仲良し3人で栽培

3人は岡本喜八郎さん(85)、足立一良さん(84)、中森利明さん(74)。同町西中の計30アールほどのほ場で黒大豆や小豆などを低農薬栽培し、“3人の老人”から取った「スリーエル」というブランド名でJA丹波ひかみの「とれたて野菜直売所」や、「ひかみ四季菜館」に出荷している。今秋は黒枝豆700グラムを400束以上出荷。評判は上々で、遠方から注文の電話が鳴ることもあったという。

もともと、所属していた老人会の活動資金にしようと、4年ほど前に仲間15人ほどでジャガイモ栽培を始めた。今は3人だけになったが、岡本さんをリーダーに、足立さんが会計兼各作業の段取り役、中森さんが梱包係兼ムードメーカー役と、役割を分担。昨年まで岡本さんの名で出荷していたが、今年からブランドを立ち上げた。

◆“雄姿”を撮影

ほ場の前に自宅がある廣岡靖さん(78)は今年の春ごろ、体調がすぐれず、ゆっくり休んでいた。ふと外を見ると、3人の高齢者がせっせと農作業に汗を流していた。暑い中でも、畑を耕し、種をまき、雑草を引く姿に感動したと言い、「調子が悪く、気分も上がらなかった時期。休まず働く人生の先輩や後輩が、私に力をくれた」と話す。

サプライズでプレゼントした写真集

3人とは顔見知り程度だったが、ほ場に出て話をする間柄になった。足しげく通うようになったため、「僕の出勤簿を置いといて」と冗談を飛ばすほど仲良くなった。そして、畑で黒枝豆がすくすく育っていく様子や、収穫作業の風景、黙々と作業する3人の雄姿と笑顔をスマートフォンに収め続けた。

3人から、ブランドに恥じない作物栽培を目的に集団耕作していることを聞き、心が揺れたという。写真集の作製を思い立ったのは、「自分の気持ちを表したかったから」と言い、「丹波黒豆生産 後期高齢者3人の奮闘記録」とタイトルを付けた。15枚のカラー写真を1ページごとに配した。縦横15センチほど。小さいけれども心を込めた写真集だ。

廣岡さんの“気持ち”を受け取った3人は、「びっくりした。家族に見せると『感動した』と言って喜んでくれた」と笑顔をはじけさせた。「年も年なので、栽培規模を大きくすることはできないかもしれないが、健康のために続ける励みになった」と話している。

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