本紙記事2部門で3本入賞 全国の地域紙コンクール「ふるさと新聞アワード」

2022.11.11
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メディア業界の専門紙「文化通信」を発行する文化通信社(東京)は、地域紙の優秀な記事を表彰する「ふるさと新聞アワード」の第2回受賞記事を発表し、丹波新聞の「『五榜の掲示』高札見つかる」(2022年5月19日号掲載、古西純記者)が「もの」部門で最優秀賞に、また、「丹波栗で世界最大のモンブラン 3高校有志合同プロジェクト」(2021年7月15日、12月23日、22年2月6日掲載、足立智和記者)、「『人身御供伝説』伝える謎の神事」(2021年12月19・23日掲載、森田靖久記者)がいずれも「こと」部門で優秀賞を受賞した。

全国地域紙20紙から約200本の記事がエントリー。1次選定で10本に絞られた後、外部審査員の加来耕三さん(歴史家、作家)、小山薫堂さん(放送作家、脚本家)、高橋俊宏さん(ディスカバー・ジャパン代表取締役)、中川政七さん(中川政七商店会長)、山崎まゆみさん(温泉エッセイスト)が選定した。

 

□「五榜の掲示」4枚見つかる 他にも6枚の高札 「歴史実感できる史料」

古西 純 記者
 「村でたくさんの高札が見つかっている」と、丹波市山南町岡本地区の歴史愛好家の方から連絡をもらい、取材に伺った。明治新政府が全国に出した「五榜の掲示」4枚を含む、計10枚の高札がずらり。教科書では名前を見たことがあるが、本物を目にして、歴史が一気に身近に感じられた。

ネットで検索してもあまり出てこなかったので、五榜の掲示の現物は「貴重なものかも」と、市の文化財課や、大学の研究者にコメントを求めた。すると意外にも、「文化財としての価値はさほど認められない」という返答だった。今のところ市が引き取る予定はなく、所有は引き続き自治会に任せるとのこと。自治会では、高札は桐箱を新調して大切に保管されているが、今後も高札が埋もれたり紛失したりしないようにするには、住民が自分たちで価値を認めて引き継いでいく必要がありそうだ。

岡本自治会には、高札が置かれていた場所を示す「絵図」が残っており、実際にどこにあったかを知ることができるところが面白い。高札の模型をラリーで巡って楽しめるようなイベントをすれば、地域の関心も高まるのではないだろうか。

補足になるが、紙面はモノクロなので、QRコードを読み取ると、カラーで高札の写真が見られるようにした。丹波新聞のこうした小さな工夫も評価の対象になったのであればうれしい。

 

□やった!ギネス達成ギネス達成! 高校生の丹波栗プロジェクト オンラインで291人同時にモンブラン「パクっ」

足立智和 記者
 ギネスワールドレコードに挑戦するイベント当日、11台のプロジェクターが会場(丹波の森公苑大ホール)スクリーンに455人の市民の顔を映した瞬間、全身に鳥肌が立ち、こみ上げてくるものがあった。「偉いぞ高校生。よくぞこれだけの人を集めた。素晴らしいぞ、市民。こんなに多くの人が、高校生の企画に協力するなんて」と興奮した。

スクリーンの向こうの参加者から、「高校生を誇らしく思う」、小学生の女児は「私も高校生になったらプロジェクトをしたい」の書き込みがあり、また感動した。

後日メンバーを集め開いた「プロジェクトは、まちに何を残したか」を振り返る座談会で、メンバーは、「市民が高校生を信じてくれた」と言った。市民の温かい気持ちに触れ、「地元を良いところだなあと思う気持ちが生まれた」とも言ってくれた。

イベントの準備で同世代以外との折衝が多かったのだろう。取材を重ねるたびに、受け応えがしっかりし、生徒の確かな成長を感じた。 丹波市に、ギネス記録と高校生と市民の「架け橋」が残った。半年に及ぶ大事業を終え「モンブランロス」になったのは、生徒だけではない。「お金は、参加者は集まっているんだろうか」「機材は順調に動くんだろうか」勝手に気を揉み続けた、番記者もまたそうだった。

今年度、先輩からバトンを受け取った後輩が、新しいプロジェクトに挑戦している。引き続き、記者として、一市民として、応援を続けたい。

 

□「人身御供」伝える謎の神事 背景に「大怨霊」の影 闇の中の祈り、今も

森田靖久 記者 
神事自体は一見すると「普通」。しかし、記事にも書いたとおり、細部を見ると興味深い。背景に人身御供と犬の伝説、さらには怨霊伝説があると知った時には、背筋を冷たいものが流れた。

2つの伝説が村という共同体の意思に染み込んでいるからこそ、今も律義に神事を守っておられるのだと感じた。隣近所の関係が色濃く残る「ふるさと」ならではだ。

一方で、市内を見渡すと少子高齢化によって、どこの村も祭りの維持が難しくなってきている。そこに追い打ちをかけるコロナ禍。「もうやめとこか」というところもあるかもしれない。

だからこそ、私のような外部の人間が、今、さまざまな祭りを見ることができるのは、その土地の人々の努力によるものということを実感する。これからも継承してもらいたいが、外部がとやかく言える立場にはない。

ただ、犬飼の神事は大きな話題となり、ふるさと新聞アワードにも入った。何気なく営まれている祭りも、多くの関心を呼ぶ可能性があるということ、そして、それが地元の魅力になっているということを伝えたい。アワードは、脈々と神事を受け継いできた犬飼のみなさんにこそ贈られるべきだ。

そして、その魅力を発掘し、目に見える形で外部に届けることこそが、丹波新聞に課せられた使命であり、存在意義だとも思う。

知っていそうで知らない情報はまだまだ眠っている。ぜひ、ご一報くださいませ。

 

※このほかの受賞記事は次のとおり。

☆グランプリ
胆江日日新聞 「『コラボが熱い!』異業種で商品化」
☆「もの」部門 
【最優秀賞】
人吉新聞 「『球磨川』運んだ酵母で焼酎 災害から2年の日発売」
【優秀賞】
熊野新聞 「整備兵が記した真珠湾攻撃 堀さんが残した手紙」
☆「こと」部門
【最優秀賞】
熊野新聞  「1日限りの『とボケた喫茶店』」
☆「ひと」部門
【最優秀賞】
いわき民報 「草野心平『最後の詩』などの直筆を紙面公開」
【優秀賞】
いわき民報 「常盤炭礦に女子野球チームの活躍」
夕刊デイリー  「剥製作りに挑戦中 小学5年生 尽きない探求心」
夕刊三重 「町をキリンだらけに 奥谷さんが町産材で手作り」
☆文化通信社・特別賞
須坂新聞 連載「てくてくすこう」
市民タイムス 「こちらタイムス調査隊」

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