植物で染めた色の美 京都の老舗染織工房が出品 「透明感と豊かな色彩見て」

2022.11.21
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虹を連想させる美しい絹の染色作品と、それらを手掛けた染色家の吉岡さん=兵庫県丹波市氷上町石生で

兵庫県丹波市氷上町石生の氷上回廊水分れフィールドミュージアムで、冬季特別展「植物が生み出す自然の色」が開かれている。京都で200年以上続く染織工房「染司よしおか」(京都市)の協力を得て実現。同工房6代目当主、吉岡更紗さん(45)が、絹を紅花や茜、藍などの植物で染め上げた、虹を連想させる色彩豊かな染色作品が飾られている。また、染料として用いた植物の乾燥標本と写真、解説パネルも作品のそばに展示し、染色の世界がより理解できるようになっている。

会場の吹き抜けを生かして、幅約110センチ、長さ約5メートルの絹を、水色や橙色、紫色など10色に染めた作品をディスプレイ。さらには、同様に染めた幅約45センチ、長さ約2・6メートルの絹12枚を天井からつるして展示。その情景は目に鮮やかで、虹を連想させる。豊かな階調や発色の濃淡は、染め重ねる日数や、灰汁、みょうばんなどの媒染材でつくりだしているという。

紫色はムラサキ科の多年草「紫根」で、赤色や朱色などの暖色系の色はキク科の一年草「紅花」や、アカネ科の一年草「日本茜」で染めた―などとする解説パネルが作品そばに置かれ、作品への理解を深める仕掛けがある。

吉岡さんは、「植物の自然の染料から生み出される透明感と豊かな色彩をご覧いただけたら」と、来場を呼び掛けている。

同工房は、東大寺のお水取りで奉納される椿造り花や、薬師寺の花会式で奉納される桜や桃、ユリなどの造花の材料となる染和紙を手掛けており、それら奉納品と染和紙も紹介している。

5代目で吉岡さんの父、故・幸雄さんが以前、丹波市の伝統的な植物染織である丹波布の染色指導を行っていた縁もあって、同特別展の企画に結びついた。丹波布も展示している。来年2月12日まで。

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