山麓に尊氏伝説残る史跡 山南町金屋の十三塚

2022.12.11
たんばの世間遺産地域歴史

 

ヒノキの植林の中に整然と築かれた塚=兵庫県丹波市山南町金屋で

当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は丹波市山南町久下地区の「金屋の十三塚」です。同町金屋のカケジ山の麓を走る林道で、石龕寺(同町岩屋)へと通じる通称「寺坂」の脇の植林の中に、南北一直線に6メートルほどの等間隔で並ぶ大小13基の石積みの塚がある。中央の塚はひときわ大きく約4メートル四方で、高さは約90センチ。その南北両側に6基ずつ小塚がある。何の目的で造られたのかは不明というが、「十三仏信仰」(15世紀初頭―16世紀)に伴い築造されたとする説が有力。そんな学説と並んで地元ではこんな伝説が残っている。

13基の塚の中でもひときわ大きい中央の親塚

北条氏との戦いに敗れた足利尊氏が京都を落ち延び、金屋にたどり着いた。13人の部下が尊氏の影武者となり、追っ手を引き受け奮戦したが、「今はこれまで」と自刃。尊氏は無事、石龕寺に逃れ、後に身代わりとなってくれた13人の部下の冥福を祈って塚を築いた―。

郷土史に興味を持つ竹内安紀さん(74)=同市同町金屋=は、「村の年配者で定期的に草刈りをして守っている。トレッキングコースでもあるので、尊氏の歴史に思いをはせながら散策を楽しんでもらえたら」と話している。

金屋の十三塚は、規模こそ小さいが、盛り土ではなく、割石を積んで塚となす形態が非常に珍しいとされ、1986年に国の重要有形民俗文化財の指定を受けている。

 

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