命の好循環を 駆除の鹿・猪肉をペットフードに 牧場の捨て犬に心痛め

2023.01.31
地域

市内で捕れた鹿、猪の肉を使ったペットフードを製造、販売している森重希美さんと、保護施設から引き取った愛犬「ごま」=兵庫県丹波篠山市今田町木津で

兵庫県丹波篠山市今田町木津の森重希美さん(36)が、野生の鹿、猪の肉を使ったペットフードを開発し、販売している。子どもの頃から、実家の牧場に、育てられなくなった犬を捨てていく人がいたことに心を痛め、「動物の保護に関わる仕事に就きたい」との思いを抱き続けていた。売り上げの一部は市内の動物保護施設に寄付。害獣を有効活用したペットフードから、命の好循環を目指している。

屋号は「ささやまジャーキー工房」。鹿、猪肉の「ジャーキー」(税込み1200円)と、普段使いのペットフードにかけて味のアクセントにできる「ドライふりかけ」(同800円)を販売している。有機栽培のニンジンとダイコンを組み合わせたふりかけもある。

いずれも無添加。鹿、猪肉共に、たんぱく質や、疲労回復などの効果があるビタミンB群などの栄養分が豊富。かつ、カロリーは低く、ペットにとっては良いことづくめ。

ジャーキーは、自宅のキッチンで、冷凍肉をカットした後、70度に設定したフードドライヤーの中に入れて14時間以上乾燥させることでうまみを凝縮する。ふりかけは、乾燥させた肉を手動の製粉機で粉砕する。

自宅のキッチンでジャーキーを製造する希美さん

希美さんは「人が食べられるぐらいの『ヒューマングレード』で、体を第一に考えたおやつ。少量だけど、『良いものを』という思いで、手間暇かけて手作りしている」とアピールする。

北海道上川郡清水町出身。実家は牧場を営んでいる。3000頭以上の牛を飼育。人の食料として旅立つ運命の牛を見て育ち、命の大切さを肌で学んだ。

時折、牧場に捨てられている犬を見るたび、「『餌のある牧場に捨てれば、何とか生きていけるだろう』という気持ちから罪悪感が薄れるのかも」と思いつつも、子どもながらに「助けてあげたい。大人なのになぜそんなことをするの」と心を痛めた。母はそんな犬を見捨てられず、小屋を建てて面倒を見ていた。

静岡県内の大学を卒業後、什器レンタルなどを手掛ける東京の会社に就職。営業職として働く中、「いつか動物に関わる仕事がしたい」と思い続けていた。

32歳の頃、過労で体調を崩した。そこに、コロナ禍も重なった。静かな田舎で生まれ育った希美さん。夫・拓也さん(36)の仕事がフルリモートで可能となったことも後押しし、田舎への移住を思い立った。

拓也さんの出身地の兵庫県内を中心に移住先を探し、丹波篠山市と巡り合った。「空気感と、人ののんびりとした感じ。故郷に似ている、と直感」(希美さん)、2020年12月、夫婦で移住した。

「手に職をつけたい」と21年4月、農村での起業を学ぶ「篠山イノベーターズスクール」に〝入学〟。動物の保護に関わる仕事を模索する中、農作物に被害をもたらすとして、鹿や猪が年間約120万頭が駆除され、9割近くが廃棄されている現状を知った。しかし、犬にとっては栄養豊富な食材。「命の大切さがくっつき」、ペットフードの開発をひらめき、昨年の冬から販売を始めた。

動物保護活動に貢献したいと、売り上げの一部は、行き場を失った犬や猫を保護する施設「アニマルレフュージ関西・篠山アーク」(丹波篠山市後川下)に寄付する。希美さんは移住後、同施設でボランティアスタッフとして働き、1匹の犬を引き取った縁がある。

今後、ペットフードの製造や販売を手掛ける施設の立ち上げや、高齢や、歯が少ない犬でも食べることができ、水分を多く含むウェットフードの開発をもくろむ。

希美さんは「猟師さんも農家さんも、誰一人として命を無駄にしても良いとは思っていない。狩猟も命がけの仕事。一生懸命生きながら、人の都合でやむなく駆除された命を、次の命へつないでいきたい」と思いを語る。

商品は「ささやまジャーキー工房」のオンラインショップから購入できる。

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