河合先生どう顕彰 市民らが検討委員会 ハード・ソフト両面考える

2023.02.06
地域

 

河合氏を顕彰する委員会で委員長に選任され、決意を述べる清野さん=兵庫県丹波篠山市北新町で

兵庫県丹波篠山市は、一昨年5月に逝去した世界的霊長類学者で、名誉市民の河合雅雄氏を顕彰し、自然保護や野生動物との共生など、河合氏の理念を市民と後世に伝えるため、その内容を議論する検討委員会を立ち上げた。既存の施設を活用し、河合氏の功績や写真、ゆかりの品などを展示する場所を整備することに加え、河合氏の「心」を教育や学びの場でどう生かしていくかなど、ハード、ソフトの両面を考えていく。

市民などから河合氏の顕彰事業について要望を受けた市は、経歴や功績、写真などのパネルや、著書や論文、ゆかりの品、昨年5月に開催した「偲ぶ会」で上映した追悼映像「自然に遊ぶ」が見られるなどの「顕彰場所」の整備を検討。設置場所やそのほかの顕彰事業を展開するに当たり、検討委で意見を募る。

委員会は市民など13人で構成。地元自治会長や地元の小、中学校、図書館協議会などのほか、著書「少年動物誌」を演劇にしたサークルや有機農業関係者、河合氏を囲む「万兎(マト)の会」メンバーなど、ひとかたならぬ思いを持った人たちが集った。

24日に同市役所で初めての会合が開かれ、河合氏が会長を務めた日本霊長類学会に所属し、神戸大学准教授でもある清野未恵子さんが委員長に選任された。清野さんは、「先生の後を引き継ぐしっかりとした場所は、今のところ学会の中でも設置する予定がない。もし先生の思いや業績をまとめる場所ができるならば、丹波篠山が中心になる。良い議論をしていきたい」と決意を述べた。

「父の代からのお付き合いだった」「何度も家を訪ね、酒を酌み交わしながら世間話をした」など、委員それぞれが河合氏との思い出を語りながら議論。「先生の児童向けの文学などを市内の学校に配布して『マト文庫』を作り、教育と文学を掛け合わせてはどうか」「先生に教わった昆虫採集は子どもだけでなく、大人もはまった。ぜひもう一度」など、子どもたちに河合氏の功績を伝える取り組みなどが提案された。

一方で、「映像や著書を展示するだけでは、一度見たらそれで終わりで、本当の学びにはならない。ぜひ著書を貸し出すなどして、先生の『心』を身に付けるようにしてほしい」「先生の体験を追体験できるような取り組みが必要では」など、ハード面以外の重要性を唱える意見が出された。

また、「これまでにもさまざまな取り組みがあったが廃れてしまっている。その原因を考え、改めて見直していくべき」「常設展示はもう少し先にして、まずは先生のことを市民に知ってもらう活動が大事」という声もあり、熱心な議論が交わされた。

検討委は今後も継続して議論を重ねていく。酒井隆明市長は、「ただ場所を作れば良いとは思っていない。ただ、これまでもさまざまな取り組みを行ってきたが、先生の存在を知らない人も多く、忘れ去られてしまうのではないかと危惧しており、時期がたてばたつほど、機運がしぼんでしまうかもしれない。ぜひ良い議論を行ってもらいたい」と期待していた。

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