パワー与える珍木 磯宮八幡神社のハダカガヤ

2023.03.08
たんばの世間遺産地域自然

 当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は兵庫県丹波篠山市日置地区の「ハダカガヤ」です。

丹波篠山市日置にある磯宮八幡神社の境内にそびえる3本のカヤの木の中で、中心に立つ「ハダカガヤ」。このハダカガヤの実は、通常の実にあるはずの表皮下の硬い殻がない。突然変異が起こったとみられ、世界でも類を見ない珍木と言われており、国の天然記念物に指定されている。旧日置小学校の校歌の歌詞に使われたり、同地区の幼稚園名を「かやのみ」としたりと、日置地区のシンボルとなっている。

ハダカガヤは樹高約20メートル、幹回り4・5メートルほど。樹齢は不明。カヤの実は9月中旬―下旬に採れる。同神社の畑尾芳彦宮司(92)は「小さい頃はよく炒って食べていた。ピーナッツより香ばしくておいしい。終戦前後は朝早くから取り合いになっていた」と笑う。

室町幕府の初代将軍・足利尊氏にまつわる伝説も残る。尊氏が天皇側の勢力に敗れ、九州に落ち延びる道中、同神社を訪れ、武運長久を祈り、カヤの実を土の中に埋めたのが、「ハダカガヤ」として成長。尊氏は天下平定を果たし、磯宮の地に田畑70町歩を寄進したという。

「貴重な木を枯らしてはいけない。後継ぎを残そう」と、畑尾宮司は幼い頃、父の裕彦さんと共にハダカガヤの枝を切り取り、水苔を巻いて境内の土の中に埋めた。その後、高さ5メートルほどに成長した2本のカヤの木から、表皮下の殻がない実がなるようになったという。

「木を見ていると、どこか懐かしさを感じる」と畑尾宮司。「散歩で訪れる人が多い。観光客も多く、昨年の恵方参りでは大阪から60台のバスが来た。触ったら長生きできるという人もいる。自分がまだゴルフをできるぐらい元気で長生きしていられるのは、ハダカガヤのパワーのおかげかも」と豪快に笑っていた。

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